978fdcfd.gifありゃりゃ、日が変わったら、もう12月なのね。あー忙しい忙しい…。
と、ゆーワケで、自分が聴きたいアルバムは全部お預けにして、仕事絡みのCDばかりを聴き漁った一日。某音楽誌の12月に出る号で、J-FUSIONシーンの現状レポートみたいな記事を任されているのだけれど、今のJ-FUSIONって、実はすごく面白くなり始めてるのデス。
確かにカシオペアだ、T-スクエアだ、高中だっていうベテラン勢の動きも活発なのだれど、そうした自分のスタイルやパターンを作ってしまった連中ではなくて、新しいコト、面白いコトを試してる連中がドドッと増えてきてる。いわゆる“FUSION”っていう概念をブチ壊して、スピリットとしての"FUSION"を模索してる、というか。カナザワ的に言わせりゃ、それは70年代の"Crossover"と近い感覚になるのだけれど。

話はズレるが、皆さんはFusionとCrossoverって同義語だと思います?? もちろんジャンル用語としては同じだと思うし、扱いは一緒で構わない。でもボクは、現実的にはハッキリとニュアンスの違いを感じていて。要するに、様々な音楽要素が元の形を留めたまま、激しくぶつかり合うのがCrossover、互いに溶けあって一体化したのがFuison。つまり、両方とも音が融合していくひとつのプロセス上に並んでいるけれど、その度合いが全然違うと思うわけ。音楽の完成度としては、当然FUSIONの方が上。Crossoverはまだ実験的要素が強くて発展途上。でも、それだからこそ面白くもあるわけ。FUSIONの場合、頂点を極めてしまえば、そこから先は形式美を追うだけの拡大再生産になってしまうのだ。
たとえば、グローヴァー・ワシントンJr。CTI時代の彼は『Mr.MAGIC』なんて好盤を出しつつも、まだ未完成。それが大傑作『WINELIGHT』で自分のスタイルを築き上げ、次作『COME MORNING』で安定化を図る。ここまでは良かった。しかしその後はそこから抜け出せず、ジリジリと後退していったのだ。そんな例はいくらでもある。
でも知り合いの某ライターさんは、Fusion=Crossoverという考えを譲ろうとはしなかった。それは単に、時代の移り変わりと共に表現形態が変わっただけだと。へぃへぃ、そーですか。だけど、どーして時代と共に表現が変わったのか、きっとその背景があったんじゃないですか? それは音楽の質の変化と連動していたんじゃありませんか? そういうところに目を向けないから、Fusionは聴き心地がイイだけのイージー・リスニングみたいに言われちゃうのだよ。
ボクがスムース・ジャズを積極的に支持しないのは、つまりはそーゆーコトなのだ。サウンド的には嫌いじゃないけれど、あまりに画一的すぎるわけさ。

ところがスムース・ジャズが根付かなかったJ-Fusion界は、一足先に新しい時代へ入ろうとしてる。そこには当然、PE'Z、urbやgroovelineといったストリート・ジャズやジャム・バンド、ジャズ・ファンクといった若い勢力の台頭がある。だけれど、そういう連中に負けない、イヤ、もしかしてそれ以上に過激なベテランも出て来始めた。

スンマセン、前置きが超長くなりました。ようやくNon Chordsです。
彼らは何と、斉藤ノブ、後藤次利、そして元チェッカーズの藤井尚之という新ユニット。パーカッション、ベース、サックスで、和音楽器がないからノン・コード。単純って言やぁ単純だけれど、だからこそこんな過激でアバンギャルドなコトができるんだろう。プリミティヴなパーカッションにウネウネとした変態的ファンク・ベースが乗っただけで、ちょっと呪術的な雰囲気。で、そこにフリーキーなサックスが入るというのが、基本的なNon Chordsの世界なのだ。シンプルな編成だから、行こうと思えば何処にでも行けちゃう。まさに言葉通りCrossover。スタンスとしてはフリー・ジャズに近いけれど、ロックやファンクの色も濃いから、やっぱ、飛び切り自由度の高い"Crossover"と呼ぶのがふさわしい。いずれにせよ、譜面やアレンジなど存在しない感性のサウンドだ。

もしかするとチェッカーズ・ファンは、尚之は頭がオカシクなったんじゃないか?って思うかも。パラシュートでノブのファンになった人も、多分理解不能だろう。ホゥホゥと思うのは、次利の80年代のソロ・アルバムを知ってる人かな。かくいう自分も、彼らを完全に分かってるワケぢゃない。ただ、コレを素直に受け入れてしまえるような、ニュートラルな耳を持ってるだけだ。

ちなみにこのユニット、5月のCrossover Japanで、インターバルの時にセンターステージでミニ・ライヴをやってたんですが、行った方、覚えてます? ボクは単なる遊びのセッションだと思ってたので、まるで気に止めてませんでした(汗) だからアレがユニットとして作品を出してきて、かなりオドロイテマス★ 
しっかし、仕掛人のノブさんも凄いけど、もっと驚くのは次利さんの最近の張り切りぶり。このNon Chordsのほかに、山木秀夫とのリズム・ユニット"gym"の2枚目、それに一年ぶりのソロ・アルバムの計3枚を、同時にリリースしてる。なんか、沢田研二とやり始めた頃みたいに、創作意欲に溢れちゃってるようですネ。