80698714.jpg再評価! 
再発に応じて某誌のレビューが回ってきたので、久々にジックリ聴き込んでいるのだけれど…。多分、コレ聴くの10年ぶり以上だな〜、なんてノンビリ構えていたら、次第に冷や汗がタラ〜リ。これって、こんなに良かったっけ…。なんか、いつの間にかグイグイッと引き込まれている自分を発見して、ちいっとアセッている。
コレ、celesteでギャリー・グレンと一緒にリイシューされたばかりなのだけど、実は「ギャリーはイイけど、どうして今更こんなん出すんだ?」と少々いぶかしく思っていた。ボクはこれを新譜としてリアルタイムで買っていて、当時はそれなりに気に入って聴いてたのは覚えてる。クワイエット・ストーム全盛期、その一方でGUYのヒットでニュー・ジャック・スウィング勢もガンガン出てきてた頃だ。だからコレも打ち込み系の音が中心で、ボクの頭の中の音はすっかり色褪せていた。ところがところが…。

ちなみにメイン・イングリーディエントは、70年代前半に活躍した黒人男性3人組のヴォーカル・グループ。2代目リード・シンガーのキューバ・グッディングのシルキーなハイトーンの魅力で、バリバリ活躍してた。
エッ!? キューバ・グッディングって、あのアカデミー俳優の? 
イヤイヤ、コレはその親父さんなのです(ジャケ右側)。

そのキューバが76年にソロに転向。Motownから出たファースト・ソロは、デヴィッド・フォスターやマイケル・オマーティアンがアレンジャーに迎えられ、なかなかAORっぽ好作品になっている。だからボクのガイド本『AOR Light Mellow』で紹介し、それで注目されて日本でだけCDにもなった。けれど看板シンガーに逃げられたグループは低迷し、既に過去の存在に甘んじていた。それが突然89年になってキューバが復帰し、デュオ体制で戻ってきたのだ。

もちろん彼のシルキーなハイトーン・ヴォイスは健在だった。基本路線は当然ミディアム・スロウのクワイエット・ストーム系。その中で、ルーサーの<Never Too Much>のリフを引用した<Surrender>とか、ホール&オーツの大ヒット・カヴァー<I Can't Go For That>といったダンサーがイヤにカッコ良く聴こえた。オッ、おっさん達も若いのに負けずニュー・ジャックのノリかい?ってな感じで。
その印象が強いから、いつしかアルバム全体のイメージが古臭くなっていたのだ。

だから今、改めてこのアルバムを聴いて、彼ら本来の魅力、作品のベーシックな部分を思い出した次第。例えばアニタ・ベイカーあたりに比べると、特に飛び抜けた曲があるわけではなし、おおよそ地味ではあるのだけれど、じんわりと真綿で首を締めるような快感は、むしろコチラかな?って思う。今となっては、上記2曲は妙にチャカポカしてるように聴こえて、少々ダサイ。だからそれを抜いてプレイすると、なかなかマッタリした気分に浸れる。ホント、かなり魅惑的な艶っぽさだ。

ウン、目の前に酒があって、傍らにイイ女でもいたら、ちょっと口説きたくなる音ですな…。
「君を愛したいんだ、今、すぐに…(I just wanna love you)」
のわんちって(苦笑)