55e84e5e.jpgショック!…
もうご存知の方も多いと思いますが、松原みきさん、2ヶ月も前に亡くなっていたんですね。正確には10月7日、子宮けいガンが原因とか。享年44歳…って、オレと同じじゃん(彼女の方が一学年上ですが)。3年近く闘病してたそうで、逝去も昨日ようやく公表されたようです。ちょうど『Light Mellow Splash』に<真夜中のドア>を使わせてもらったばかりだし、DJイベントでもしょっちゅう廻してたので、ホントびっくり。
デビューが80年で、ボクが大学生の時。だから<真夜中のドア>が売れた時から知ってたし、仲間内でもコレを演ってるバンドがあった。日本のポップス・シーンを代表する作曲家:林哲司の初期名曲でもある。デヴィッド・フォスターのオマージュだって気づくのは、もう少し後だったかな…。

その後も数枚リアルタイムで聴いたけど、でもとにかくこのデビュー・アルバムが最高の出来。20歳足らずの女の子が目一杯背伸びをして大人の女を演じてる、でも今イチ成り切れなくて本音がチラリ、そのあたりのフレッシュな雰囲気がクリスタルな時代にピッタリだった。“私の肌からあなたの匂いが消えるまで吹きつづけて”と願う<Manhattan Wind>、タフな女を歌う<愛はエネルギー>など、少々はにかんだようなセクシーなヴォーカルが、もぅたまらん…って感じ。
林哲司以外にも、芳野藤丸、佐藤健、惣領泰則、それにCharに<気絶するほど悩ましい>を書いた梅垣達志らが作編曲で参加。バックは後藤次利、林立夫、松原正樹、今剛、井上鑑、渋井博、z斉藤ノブなどが中心になり、藤丸曲にはSHOGUN一派、佐藤曲には美乃家セントラルステーション一家がついている。これだけでスゴイ!、豪華絢爛って感じだけど、とにかく好曲が目白押しなんだよね。

ただこの路線がもうひとつ定着しなくて、セカンドではキュートに等身大のイメージになったり、次はまたセクシー路線に戻ったり、彼女のキャパシティの広さが逆に仇になったトコロもある。ウルサ方の音楽ファンだと、西海岸の実力派グループ、Dr.STRUTとの邂逅も記憶に残っているだろう。彼らはMotownで2枚、キャニオンで一枚アルバムがあるけど、中心人物のティム・ウェストンってギタリストは、初期スティーリー・ダンのアシスタント・エンジニアを務めた人で、活動停止期のウォルター・ベッカー・ワークスにも関わっている。その一方でWishful Thinkingを率いて活動したり、伝説的女性シンガー:シェルビー・フリントと共演作を作ったり。ブライアン・ウィルソンやジェームス・テイラーのカヴァー集をプロデュースしたのも彼だった。そんな実力派と組んだから通受けはイイのだけれど、結局<真夜中のドア>を越せなかったなぁ…って思う。数年前に市川藍のカヴァーが出た時、もっと再評価されるべきだったと思うけど、今となっては後の祭りか…。

80年代というクリスタルな時代に、まさにその申し子として登場した松原みき。ボクは決してアナタの歌声を忘れない。どうぞ安らかに…