1b780ce5.jpgベック関連の原稿を書き上げ、そのままCSラジオ・プログラムの選曲に突入。この時期は、例年クリスマスあたりまで年末進行でドタバタするのだけれど、今年もそんな感じですな。

で、今年の産業ロック〜メロディック系の作品の中で、カナザワ的に一番気に入ってるこのアルバムから、何か1曲セレクトしようと思って、改めて聴き直している。やっぱりポイントはミッキー・トーマスのヴォーカルでしょう!!
思い返せば、ジェファーソン・スターシップの『FREEDOM AT PONT ZERO』にホレたのがキッカケだから、もう25年の付き合いになる。さすがにエルヴィン・ビショップ時代のコトはよく知らない。でもジェファーソン加入以前のソロも揃えたほど、この人のハイトーンは好きだった。まぁ、スターシップを乗っ取ってしまった時には、正直やり過ぎぢゃないの?と思ったが。でも<Sara>とか<Nothing's Gonna Stop Us Now>は、ホント名曲。その後ジリ貧になっていった時は、結構悲しかった。

そのあとは、時々自分の嫌いな逆カヴァー物で歌ってるのを見る程度で、“もう終わってる”状態だった。けれど、JTスーパー・プロデューサーズのイベントでナラダ・マイケル・ウォルデンと一緒に来日した時のステージを観て、ぶっ飛び!! ハイトーンは全然衰えてないし、バリバリ現役。どうしてこの人が何処とも契約できないんだろ、なんて不思議に思った。実はそれからずっと、ミッキーの復活を心待ちにしてたんだよね。

ところが彼の再登場はソロやバンドではなく、ユニットのフィーチャリング・シンガーとして。しかもそれが北欧のユニットだったから、正直ガッカリした。イヤ、北欧のメロディック・ロック・シーンが盛り上がってるのは知ってますよ。もろTOTOとかエアプレイみたいな連中がいたりするのも知ってるし、ギター/プロデューサーのトミー・デナンダーも仕掛人として頑張っている。でもカナザワ的には全然ピーンと来ないのだ。

以前どこかで書いたけど、ボクの中では“産業ロック”と“メロディック・ロック”の差は歴然としている。音的にはほとんど一緒だし、敢えてジャンル分けするのもナンセンス。だけどこの両者は、アプローチの手段と目的が違うのだ。
簡単に言っちゃうと、アメリカという広大な土地でヒットさせるべく、楽曲をトコトン磨き上げるのが産業ロック。だからココからは売れっ子ライターが出現する。ダイアン・ウォーレンとかデズモンド・チャイルドとか、あるいはトム・ケリー&ビリー・スタインバーグとかね。
けれど“メロディック・ロック”の連中がコダわるのは、あくまでもサウンド・スタイル。ややマイナー系が入った泣きのメロディにドラマチックなギター・ソロと、結構パターンが決まってる。その様式美に乗ってカタルシスを発散するのだ。

カナザワの場合、産業ロックを聴くのは曲の良さ、メロディが重要であって、スタイルではない。だから一番好きなのはフォリナーあたり。ジャーニーだと曲によって好き嫌いがハッキリ分かれる。バンドとしてなら、シスコらしさのあったスティーヴ・ペリー加入前の方がシックリくるしね。だからこの手のアーティストが北欧制作に走ると、ボクとしてはコケるわけ。もっともアメリカじゃ相手にして貰えないのだから、仕方ないのだけど。

だからミッキーが参加したこのアルバムも、買うのを躊躇してた。でも試聴機で聴いてみたら、ミッキーらしさがよく出てて、なかなかヨイではないの。理由は簡単、ジャック・ブレイズとかニール・ショーンとか、米国勢が曲を書いてる。楽曲の良さ、歌の魅力を追求することに重きが置かれてるから、ボクの肌にもシックリ合う。

そういえば、間もなくトミー・ファンダーバークのソロが出るけれど、これも北欧産。まだボクは聴いてないが、彼のハイトーンをプッシュする方向に行ってしまうと、ちょっと辛いなぁ。もちろん彼のヴォーカルは素晴らしい。でも、あくまで楽曲の良さを表現するヴォーカルであってほしいし、その具体的な歌唱法としてハイトーンを聴かせて欲しい。プロデュースがOver The Edgeと同じらしいので結構期待してるのだけど、Frontiersってイタリアのレーベルは外すコトも少なくないので、一抹の不安が…。
多分そろそろ音が届くと思うのだけど、さぁて、どっちに転ぶのか。