fb140292.jpgこれはアッと驚く衝撃の初CD化。イアン・ギラン・バンドやフランキー・ミラーを紙ジャケにしたり、一番新しいところでは変形ジャケの多いファミリーをコダワリの再現力で甦らせたり、まったく最近のエアメイル・レコーディングさんがやるコトには、ホントにビックリしっぱなしデス。
特にこのケイドー・ベルやエース(ポール・キャラック在籍!)を含む英アンカー・レーベルの世界初CD化は、個人的に嬉しすぎ。
というのも、ボク自身、アンカー・レーベルの権利の行方が気になっていて。
アメリカではかつてのABCレコードがディストリビュートを受け持っていたから、もしかしてユニバーサルか?と思ってリサーチを頼んだコトがあったのだ。その時の第一の目的が、他ならぬケイドー・ベルだった。

彼らはこれまで一般的に、英国産パブ・ロック系のファンキー・グループに分類されてきた。有名ドコロではアヴェレイジ・ホワイト・バンドやココモ、ゴンザレスといった辺りがココに入り、実際にココモのヴァーカル陣やメル・コリンズがサポートしてたりする。
でもその中でも、飛び切り洗練度が高いのがケイドー・ベルの特徴。何せリード・ヴォーカルが、マイク・オールドフィールドの<ムーンライト・シャドウ>を歌っていた、あのマギー・ライリーその人。そうそう泥臭いファンキー・サウンドになるハズがないのダ。

というコトは、例えばAWBでも後期に近くなるワケで、当然AORチックな音になる。ケイドー・ベルだって取り立ててオシャレではないけれど、AWBのように“ブルーアイド・ソウル”を売りにするほどグルーヴィーでもないし、結局は広義のAORとして紹介するのが一番的を得ているかも。今回ボーナス・トラックとして追加収録されたEP盤からの4曲には、ボズ・スキャッグス<It's Over>のカヴァーもある。アルバムしか知らない人は、ケイドー・ベルがそこまでAORに接近してたことに驚くのではないかな?

AORのファンには、リアルタイムの感覚にこだわるタイプとクラブ世代を筆頭とするハイブリッドな感覚で接するタイプ、大きく2つに分けられるコトは今までに再三書いてきた。でも前者を狙った再発や未発表音源の発掘は、もうハッキリと壁にぶつかっている。先頃のト●ー・●ュートの2枚なんて、期待が大きすぎたせいか、あまりに物足りなかった。
 ところがもう少し視野を広げてみると、当時はAORと呼ばれなかったアルバムの中にも、同じフィーリングを湛える隠れた傑作が眠っている。そうして掘り起こされた再発アルバムの方が意外な発見が詰まっていて、今のボクには何倍も面白い。

ケイドー・ベル、確かにアルバム一枚で消滅してしまったB級グループかも知れない。
でも、AORの有名処はだいたい押さえてしまった、なんていう方は、北欧やフィリピンといった辺境の地のイミテーションっぽい連中を追うより、ご自分のAOR観を広げつつ、こうした所に目を向けて欲しいと思う。面白い音楽は、意外と身近な所にあるモノです。