5ad35a0f.gifメイン・イングリーディエント(=主成分)。
このヴォーカル・トリオも最近再評価が進んでますね。それはアリシア・キーズが彼らの曲をサンプリングしたり、偶然リイシューが重なったりしてるから。そんな彼らのメイン・イングリーディエントは、二代目リード・シンガーのキューバ・グッディング。あの有名なオスカー俳優の親父である。彼はグループが3枚のアルバムを出したあとの72年に加入したが、彼らの人気が本格的になるのはココからだ。
キューバ加入後、最初に出したのが『BITTER SWEET』。翌73年に1枚挟んで、74年に出したのがこの『ユーフラテス・リヴァー』である。最近、長門芳郎氏の“パイドパイパー・デイズ”のシリーズでCD化されたけど、いわゆるポップ色の強い斬り口でのピックアップだから、この作品もソフィスティケイトされたポップ・ソウルの趣き。実際の収録曲も、アルゾの<Looks Like Rain>、スティーヴィー・ワンダー<Don't You Worry 'Bout A Thing>、シールズ&クロフツ<Summer Breeze>をはじめとして、ブライアン・オーガー、アシュフォード&シンプソンなど、ヒット・ポテンシャルを秘めたカヴァー曲が並ぶ。それを分析すると、白人受けの良いソウル・ナンバー、黒人にも受け入れられるポップス、といったチョイスが為されている。このセンスの良さが彼らの勘どころなのだ。キューバのように、ファルセットを得意とするマイルドな声質のシンガーを起用したのも、そうした指向性がハッキリしていたからだろう。

ただ少々難点なのは、ジャケットのセンス。このアルバムはソウル系のジャケとしてはとっても美しい色使いで目を惹かれるけれど、タイトルと合わせて考えると若干宗教臭いイメージがある。『BITTER SWEET』のお面ジャケもアフリカの土着系だし。音とジャケは直接関係ないとはいえ、やはりジャケ買いの反対もありえるワケで…。少なくてもボクの場合、ずっと気になるグループだったのに、ジャケのおかげで買うのが後回しになっていた。それで結局、初めてマトモに聴いたのが、89年の『I JUST WANNA LOVE YOU』だったりする。
 ちなみに本作タイトル曲<ユーフラテス・リヴァー>は、<Summer Breeze>同様、シールズ&クロフツのリメイク。そのシールズ&クロフツは、熱心なバハイ教の信者だった事実がある。

それにしても、キューバのヴォーカルはイイ。後のクワイエット・ストーム系のシンガーたちは、少なからず彼のスタイルを意識したのではないかな? でも、その親父を上回る有名人となったジュニアも素晴らしい。それに比べて日本では、偉大な親父を持つ息子たちはことごとくコケてる。長嶋、野村は言うに及ばずだし、あの堤家も地に落ちたしネェ…。