1ce08495.gif半月ぶりに再びTOTO登場。今回の紙ジャケ・リイシューに際し、某誌で4作品まとめてのレビューを書くことになった。なので、作品的にはもう充分聴き込んでいるが、リマスタリングの成果をチェックすべく、久々にこのアルバムを大音響で聴き溺れてみる。それこそ目の前の携帯の着信音も聴こえぬほどのヴォリュームで。都会のマンション住まいだったら絶対不可能な芸当です(苦笑)
ちなみに我がメイン・オーディオは、スピーカーJBL4312II、アンプDENON S-10、CDプレイヤーDENON S-10IIという組み合わせ。型はチョイと古くなったが、それなりに価格の張る機種である。やはりアーティストが必死こいて作った音楽を云々する仕事なのだから、一応人並み以上のシステムで鳴らしてあげるというのがボクのポリシー。まぁ最近は、夜だとパソコンで聴いたりしちゃうけど、オーディオ的にこだわってるアーティストなら、必ず本システムで聴く。ライターさんの中にも小さな音でしか聴けないとかヘッドフォンでしか聴けないと、住宅事情に恵まれていない方が多いけれど、それならまだ良い方。中にはオーディオに無頓着で、かなりショボいシステムで聴いて書いてる人もいるみたい。でもカナザワ的には、それってアーティストに対して失礼って気がしちゃいます。

で、今回のTOTOのリイシューだが。実は最新のDSDマスタリングは1stと『TURN BACK』のみ。『HYDRA』は01年のDSDリマスター、この『IV』は00年リマスターとなっている。DSDというは日本のソニーのリマスタリング・システムだから、『IV』はあちらでリマスターされたものか。早い話、TOTOは日本やヨーロッパと違って米では低迷気味なので、1〜3枚目のリマスターは行なわれていないようだ。リマスター時期についても4年の開きがあるけど、もうマスタリング技術が確立してからの話だから、技術的な差はほとんどない。ハード的に拮抗した条件下で違いが出るとすれば、エンジニアや再発プロジェクトの音作りに対するポリシーというコトになるが、アーティスト自身や当時のプロデューサーの監修でもなければ、そうドラスティックに変わることはない。
 とはいえ、実際に昔のCDと聴き比べると、音の厚み・奥行きがかなり違うし、シンバルやパーカッションもエッジが立っている。特に違って聴こえたのは<Africa>。昔はこんなにアコースティック・ギターが聴こえなかったぞ。

そもそもリマスタリングという作業は、わかりやすくいえばイコライジング(EQ)に近い。リミックスというのは楽器同士のバランスや低位を変えてしまったりして、かなり踏み込んだ作業になるが、リマスターは完成した音を周波数別に微調整し、最終決定する行程だ。したがってエンジニアは、作品毎にサウンドの指向性を見極めながら、より良い音に調整していくのが仕事になる。コンピレーションだと最終的な収録曲順や曲間の長さ、フェイドアウトのタイミングなどもココで決まる。
 最近は再発のデジタル・リマスター化が持てはされているが、実際のところ、広い意味でのリマスターはほとんどの再発で行なわれている。紙ジャケ化や廉価盤化のように、最近リマスタリングされたものがあればそっくり流用するコトはあるけれど、それ以外はまず確実にリマスターだそうだ。例えば、初CD化と再発CDを比べた時、音質は同じでも、録音レベルが上がっていたり音圧が上がっていれば、もうリマスター。だから再発モノに関しては、たとえ“リマスター”と謳ってなくても、かなりの確立でリマスター化されている。以前と同じマスターを再利用しないかぎり、すべてリマスター。だから問題なのは、リマスターの内容、先ほどのポリシーの部分なのである。

ひとくちにデジタル・リマスターといっても、そこには大きく分けて2つのタイプがある。ぶっちゃけ、積極的なリマスターか、消極的なリマスターということ。消極的なのはメーカーが独自に行なうもので、マスターから最新機材を使って新たにデジタルマスターを起こし直したもの。エンジニアの判断でEQによる音質補正をするが、それはあくまで音響的な意味合いで行なわれる。でもそれだけでも昔とは機材が全然違うので、古いCDよりも充分音圧が厚くなる。
 積極的なマスタリングとは、アーティスト自身やオリジナル・プロデューサーを監修につけて、しっかりした意図の下で積極的にEQを使い、大胆に音質を変えていく方法。そうなると、今まであまりよく聴こえなかったパートがいきなり前へ出て来たりして、いろいろ新しい発見が増えるコトになる。リスナーが期待し、メーカーが“●●年リマスター”と大々的に宣伝するのは、こうした一歩踏み込んだリマスターだ。したがって、再発盤にリマスターと謳ってないケースでも、実際はデジタル・リマスターをしていて、ただし必要最小限の音質補正だけね、という意味だったりする。

一般的に、CDやレコード制作の大本になるマルチテープというのは、寿命約20年と言われている。でも実際はテープのメーカーや製造ロットによって、もっと早く酸化や癒着が起きていたりする。ボクが今まで関わったコンピでも、熱処理をして何とか使えるようになったり、部分的に音が飛んでしまっていたため、そこだけアナログ盤の音を被せて修正した、なんてコトがあった。コンピの場合だと、マルチから落としたDATがマスターとして送られて来たり、既成CDをマスターにするのが当たり前だ。ということは、未CD化作品のデジタル・マスター化を進めるのが急務。紙ジャケ化もイイけれど、最近おそろかになっている過去の音源の発掘にも、もっと目を向けて欲しいものだ。