22c3bbef.gif長門芳郎さん監修によるグッド・ジョブ! まさかこんなアルバムが紙ジャケで出るとは! もぅー素晴らし過ぎます。ちなみにこのアルバムは77年のヴィンテージもの。ジャケットのイラストは松任谷姓になったばかりのユーミンが描き、ボーナス収録されたシングル曲は山下達郎の編曲/プロデュースであります!
このマザー・グースは、北陸・金沢の中・高校の同級生3人が組んだ女性3人組。主に地元のレコード店やアマチュア・コンサートで歌っていたが、卒業後に自主制作で出したシングル曲がある新人ディレクターの耳にとまり、デビューのキッカケを掴んだ。その新人ディレクターというのが、元トワエモアの芥川澄夫。デュオ解散後の彼は制作者に転身し、自分で手掛けるアーティストを探していたのだ。

芥川氏のお眼鏡に叶うくらいだから、マザー・グースのルーツは当然フォークにある。実際、76年のデビュー・アルバム『インディアン・サマー』はかなりアコースティックな出来。徳武弘文率いるラスト・ショーや吉川忠英のサポートで、フォークをベースにカントリー・ロックにまで手を伸ばした内容となっていた。だがこのセカンドは、同じラスト・ショーや吉川忠英のサポートでありながら、当時 最も旬だったティン・パン・アレイ的なポップ・ソウル色の強いサウンドへと進化。田舎から出てきた彼女たちが、急速に洗練されてゆく様を音で表現してみせた。でも100%都会に染まってしまったワケではなく、そこかしこにルーツっぽさが残っていて…。そんなビミョーな色彩感、青臭さが、このアルバムの個性になっている。ジャケを描いたユーミンが、オリジナル盤発売時に彼女たちの音を「びっくりするほど透明」と称しているが、まさにそんな感じ。もちろんカナザワ監修のガイド本『Light Mellow 和モノ669』にも掲載している。

さらに本作発表の2ヶ月後、セルフ・リメイクとなる「貿易風にさらされて/マリン・ブルー」のシングルをリリース。これが達郎のプロデュース曲で、林立夫・細野晴臣・鈴木茂・坂本龍一・浜口茂外也・中野督夫という、ゴッツイ顔合わせが実現した。そして本盤以上にグルーヴィーな出来!! 特に<貿易風…>は達郎ファン必聴の名チューンである。だから今までずっとマニアが探し求めるレアな逸品となっていて、和モノ本のシングル・コーナーでも敢えて取り上げた次第。それが今回のリイシューでは、デビュー・アルバムからのリ・レコである<貿易風…>は『インディアン・サマー』の紙ジャケに、2枚目からチョイスした<マリン・ブルー>はココに、と原曲に準じて収録された。要するに、どっちも買いなさい!という神の(紙の??)思し召しである。

結局マザー・グースは、このアルバムとシングルを出したあと翌78年まで活動を続け、やがて解散。当時のシティ・ポップスが洗練していく過程を伝えただけで、自ら華を咲かせることはなかった。まさに彼女たちは、ユーミンの描いたグラスみたいに、儚く時代を映しだす鏡のような存在だったのかも知れない。でも、その儚さが美しきことだと知っている人たちが発言権を持ったからこそ、こうしたリイシューが叶ったわけで。そうした意味ではこの業界もまだまだ捨てたモンではないし、ビジネス面と文化面の二局分化が良い形で進んで欲しいと思う。もちろん自分も、そこに少しでも貢献できるように頑張らなくては。