31486462.gif某誌の再発アルバム・レビューで、坂本龍一関連のアルバムをまとめ聴き。YMOのボックス・セット発売、細野晴臣や高橋幸宏のソロ作リイシューと一気に出まくり、それなりに盛り上がってるから、タイミングは上々だ。YMO結成に至る流れや散開後のソロ活動の行方を示唆したという意味でも、なかなか興味深い作品ばかりです。
今回再発されるのは、教授のファースト・ソロ『千のナイフ』、教授のコラボレイト作品を集めた83年の編集盤『フェイヴァリット・ヴィジョンズ』、古楽のダンスリー・ルネサンス合奏団に客演した『ダンスリー』、そして参謀役で参加した渡辺香津美のプロジェクト"KYLYN"のスタジオ作と2枚組ライヴ。それこそ『千のナイフ』なんて15年ぶりくらいに聴いたけど、当時はまったく無機質に聴こえたシンセの音が、今はアナログ・シンセならではの温かみを持って人間臭く迫ってきて、妙にフレッシュに感じた。YMOのレパートリーになった<Thousand Knives>や<The End Of Asia>でも有名な盤だし、これは書い直さなくちゃ、だわ。

でも、やっぱサイコ〜!と思ったのは"KYLYN"の2作品。何といっても香津美、教授に加え、村上秀一、高橋幸宏、小原礼、矢野顕子、益田幹夫、清水靖晃、本多俊之、向井滋春、ペッカーっていう豪華過ぎる面子が勢揃いした、J-FUSION史に残る一大プロジェクトだったのだ。でも今回はいつもの香津美側ではなく、教授サイドから"KKYLYN"を捕え直し、これまでとは幾つか違った点を再認識させられた。それはスタジオ盤『KYLYN』に顕著なのだけど、このプロジェクトはまさに渡辺=坂本のコラボレイトの発展型だったということ。フュージョン・ファンにはメンバーの豪華さとイノヴェイターたる香津美のリーダーシップばかりが取り沙汰され、実際は教授のプロデュース作品という認識が薄かった気がする。特にCD後半(アナログB面)は教授色濃厚。<E-Day Project>なんてポップな曲は彼ならではだし、<Akasaka Moon>は2人によるアコースティック・デュオ風の作りだ。これに比べるとライヴ盤では教授が一歩退いて、プロジェクトの一体感を押し出した感じ。さらに言ってしまえば、このプロジェクトから香津美を外した坂本版が、かのカクトウギ・セッションだと思う。そして彼は、この両プロジェクト終了を持ってジャズ・フュージョン的なアプローチから卒業するのだ。

今ではYMO研究が進んでいるから、テクノ創成にあった初期YMOがジャズ・フュージョンにカテゴライズされたことはよく知られている。でもそれはあくまで知識であって、テクノ後追い派にしてみたら、YMOがフュージョンと呼ばれたことに激しく違和感を抱いただろう。YMOのギタリストがなぜ渡辺香津美なのか?という疑問も当然。しかしYMO以前のメンバーたちはセッションマンとしてフュージョン人脈に属していたし、『千のナイフ』に明らかなように、教授と香津美はかなり深いトコロで共鳴しあっていた。テクノの人的素材は、実はとても有機的な関係にあったみたいだ。