b1e51ef3.jpg80年に発表されたJ-Fusion史に残る快作が、ようやく初CD化。しかも、いきなり紙ジャケとは! カナザワがトロンボーン好きになったのは、クルセイダーズのウェイン・ヘンダーソンでも、ジョージ・デュークがプロデュースしてたラウル・ジ・スーザでもなく、実はこの向井滋春からだった。ソロ・アルバムのカッコ良さもさることながら、セッション・マンとしても引く手数多だったしね。とにかく数少ない日本のトロンボーン奏者の中にあって、今も昔も第一人者であるコトには変わりがない。
録音はニューヨークで、サウンド・プロデュースは松岡直也。前作『HIP CRUISER』がラテン〜ブラジリアン・フュージョンのノリで成功したことから、じゃあその筋の第一人者である直也サンに、ってコトらしい。N.Y.へ行った目的も、その手のドラミングに定評のある(っていうか、フュージョン全般だけど)スティーヴ・ガッドと相まみえるため。さらにウォーレン・バーンハート(kyd)、ジェフ・ミロノフ(g)、ホルヘ・ダルト(kyd)、ナナ・ヴァスコンセロス(perc)、ニール・ジェイスン(b)らが向井一行を待ち受けた。

わりと短時間で制作されたらしく、必ずしもベスト・テイクばかり、とは言えない。元々楽器の性格上、瞬発力やエッジに欠けるトロンボーン。ここでの向井のソロにしたって、少々控え目というか、本領発揮には程遠い感じ。N.Y.勢、とりわけガッドのプレイにタジタジになってる雰囲気が窺える。しかし、そこで繰り広げられた熱いプレイを瞬間冷凍したようなダイナミズムが素晴らしく、非常にライヴな出来。個々の演奏がどうこうより、向井がこういう本気のセッションで懸命に吹いている、そういう磁場を楽しむ作品だと思うのだ。

結局、このアルバムの成功により、4ビート・ジャズ出身の彼は本格的にフュージョンに手を染め、モーニング・フライトやオリッサというリーダー・グループを率いることになる。そのプレイの凄さは、本作の3〜4年後に出る2枚組ライヴ・アルバムで是非。ハッキリ言って、そのライヴに関してはクルセイダーズを越えてるかも。今は再び4ビート回帰しちゃった向井だけに、とても貴重な音源でもある。頼むから早くCDにしてくれぃ! 

ちなみこの紙ジャケ、"Better Days レプリカ・コレクション"というシリーズでの登場。Better Daysは、とても信頼のおけるフュージョン・レーベルだった。それを当時のアナログ盤のミニチュア形式でリリースしているワケで、渡辺香津美や坂本龍一も同じシリーズで発売されている。実際そのレプリカ具合はかなり高水準なのだが、どうせならシリーズ統一オビじゃなく、当時のオビの再現までコダワって欲しかった気も。ロック系の紙ジャケは、もうそれが当たり前ですからねぇ。でも形はどうあれ、このCD化には諸手を挙げて感謝感激です!