2ff3cedc.jpg某誌特集『R&B 70~80'S 名盤カタログ』のフィメール・シンガー編に、Phyllis Hymanを推薦。誌面の都合で40人しか掲載できないようだけど、叩き台の候補に入ってなかったので「入れた方がイイんじゃないのー」と。「じゃあアルバムは何にする?」と訊ねられ、ちょっと迷った。この人って駄作がなく、どれも程々にまとまってるからねぇ。70〜80年代のArista期、85年からのPhilladelphia International期と、それぞれに好盤がある。
以前作ったブラコン本では意図的にフィリーでのアルバムを選んだが、今Phyllisの作品を一枚選ぶなら、Norman Connorsが手掛けた81年作『CAN'T FALL IN LOVE AGAIN』かねぇ。とにもかくにもAshford & Simpsonが書いてる<I Ain't Asking>が強力なので。しかし今回は掲載候補が80's作品に偏り気味なので、できれば70年代の作品が欲しいとのこと。ならばと、この79年作をピックアップした。プロデュースはJames Mtume & Reggie Lucas。Stephanie Millsを当てて、メキメキ売り出してた頃の話である。

時節がら、ディスコ・エラに属するようなナンバーもあるが、Phyllisの華麗なヴォーカル・スタイルにはそれがよく似合う。例えば冒頭のタイトル曲も、Mtume & Lucasの作るモダンなダンス・ビートのうえにTawathaやGwen Guthrieのイケてるハーモニー、フルートをメインにした ふくよかなオーケストレイションが乗って、実にゴージャスな仕上がり。それに比べ近年のダンス物は、ビートがアグレッシヴ過ぎて、風情も表現力もヘッタクリもない。こういうのを聴くと、ホント、最近のソウルは上手くても味わいに乏しいと思う。レア・グルーヴのヴィンテージ感が何故持て囃されるのか、そこをもっと考えた方がイイんじゃないの?

Phyllisのイメージも、そう。品のあるゴージャスさ、っていうかね。女優でいうと十朱幸代みたいな(古いか!?…苦笑)。大柄で華やかなのに奥ゆかしさがある。なのに最近は、ゴージャス=叶姉妹じゃない? あれは超高級コールガール(という噂)だけあって、派手なだけで品はない。実は単なる広告塔だし。藤原紀香も齢がいったら商品価値下がっちゃったみたいで、最近トンと見なくなった。結構好きだったんだケド(笑)

とは言いつつ、運転中にFMから流れる中島美嘉に心奪われてしまったりする。ウン、<桜色舞う頃>って、メッチャ良い曲だわ。でもコレって、アレンジ自体はオーソドックスだよね。メロディーの素晴らしさと彼女の歌ヂカラで、あのクオリティーにまで高めてる。ああいう曲こそ、売れて然るべき。きっとこれはJ-POP史に残る名曲になると思うな。逆に目新しさやアーティスト・パワーだけでチャートを上がってる曲なんて、数カ月後には忘れ去られる。使い捨ての音楽というのも、それはそれで必要だけれど、業界上層部は音楽を「商品」としてしか見ていない。しかもその商品に愛情を注いでないのだから。今のCDセールス不振は、JRの尼崎事故と一緒で構造的な問題。起きるべくして起こってる。早い話、魅力がないから携帯に負ける。その程度の魅力しかない持ってないのだよ、今ドキの音楽は。