fc9f7aef.jpg言わずと知れた名ソングライター、ジミー・ウェッブのニュー・アルバムが、もう一ヶ月前くらい前からひっそりと発売になっている。アルバムとしては、セルフ・カヴァー集『TEN EAST PIECES』から9年ぶり、オリジナル作品集としては93年作『SUSPENDING DISBELIEFE』から12年ぶりになるのかな。
最近はRhinoから5枚組ボックスが出たり、ソングブックが出たりしてたから、実はあまり久し振りという気はせず、何か唐突にリリースされた印象。2000年の来日公演もシッカリ観ましたよ。でもジャケを見ると、まるでカントリーみたいなイメージだから、「こりゃあもしかして…」と一抹の不安が頭をよぎったりも。まぁ、多少ムサ苦しいヴォーカルは相変らずだが、その内容は、ピアノの弾き語りにシンプルなリズムとオーケストレイションが付いたような感じ。時流に惑わされず、頑なに自分の作品を磨き上げる…。すなわち、いつもの純朴なウェッブ節だ。

曲を書いた時期も、80年代から昨年までと広く、Art Garfunkelが歌っていた名曲<Skywriter>のセルフ・リメイクがあったり。以前からのウェッブ・ファンであれば、まず期待を裏切られることはない。他にもリメイクがあるかも知れないので、細かくチェックしたい方はコチラからどうぞ。ゲストにはBeth Nielsen Chapmanが2曲に参加。この組み合わせも、さもありなん、といった雰囲気で自然に溶け込んでいる。とりわけベスのハーモニーが印象的な<Why Do I Have To...>の素晴らしさったら! またココに名曲が産み落された、そんな感じだ。

ただビックリしたのは、Fred Mollin & Matthew McCauleyという名コンビがプロデュースした2曲。このコンビとはAORの名盤にも数えられる『ANGEL HEART』を作った仲であり、Mollinの方は『TEN EAST PIECES』でも制作の指揮を執ったわけで、そこには何の不思議もない。双方に妹のSusan Webbが参加し、久し振りに歌声を聴かせてくれるのも嬉しいところだ(ソロが1枚出ている)。だがこの2曲が録られたのは、どうやら15年近く前の90年代初頭らしいのだ。何せドラムが故Jeff Porcaroである。更にキーボードがDavid Paich、ベースがLee Sklar、ギターがDean Parks、エンジニアにBill Schnee...という陣容。でもこの時期このメンツで作られたアルバムはなく、もしかしてセッション丸ごとお蔵入りしていたのでは?と思える。となると、何故今になってそれを?という疑問がフツフツと湧いてきちゃうのだ。

…そう書いていて、ふっと思い出したコトが。93年の『SUSPENDING DISBELIEFE』は、プロデューサーに名を連ねるLinda Ronstadtからの持ち込み企画だった、という話を耳にした記憶が。確か、89年作『CRY LIKE A RAINSTROM』で思い切りWebbの曲を歌ったLindaが、その御礼にJimmyのソロ・アルバム制作の資金を準備した、そんな話だったと思う。となると、急遽決まったそのプロジェクトのために、Webbが独自に制作中だったコチラが中断してしまった可能性が高い。となると、Lindaの善意は単なる“おせっかい”だったりして(苦笑)

まぁ、詳しい裏話は国内盤でも出れば、明らかになるだろう。これも、最近ベテラン勢のサポートに精力的なSanctuaryからのリリースであるし。ちょっとウェットな彼の作風は、雨の多いこれからの季節によく似合う気がする。