4dc1b41c.jpg昨日は、目黒にあるSTAR digioのスタジオで収録を終えてから、青山のBLUE NOTEへ。お目当ては重鎮ミュージシャンの集まり、ソウル・サヴィヴァーズである。ギターにコーネル・デュプリー、ベースにチャック・レイニー、キーボードのレス・マッキャン、サックスにロニー・キューバー、そしてドラムにバディ・ウィリアムス。このバンドの来日は初めてではないが、カナザワ的には初の生サヴァイヴァーズ、いやいやそのイブシ銀のソウル魂、しっかり堪能させていただきました。
今回どうして足を運ぶ気になったか?といえば、このメンツでいつまで演れるのか…と、チョイ不安になったのが理由。なにせデュプリーの盟友では、リチャード・ティーやエリック・ゲイルが鬼籍に入っている。近いところではグローヴァー・ワシントン・ジュニアも。先に亡くなったルーサー・ヴァンドロスのデビュー盤も、バディの仕事だった。そうなるとこのメンツ、いつ誰がどうなっても全然不思議じゃない。こんなコトを書くと「縁起でもねぇからヤメロ!」なんて声も頂戴しそうではあるが…。

実際、太り過ぎのマッキャンは、バディとスタッフに両脇を支えられて、ようやくキーボードに辿り着いた。プレイを始める前は「やっぱり来て良かったカモ…」なんて思ったくらいだ。でも実際に弾き始めると、立ち上がって客に手拍子を求めたり、ダミ声で迫力あるヴォーカルを聴かせたりとなかなか元気。それを見てようやく安心した。

セット内容はアーバンR&B中心の、シブくてソウルフルな音。デュプリーのコクのあるギターとキューバーの豪快なサックスがフロントでソロを張り、時々マッキャンがエレピで参戦する。レイニーが意外に大人しかったが、それでも見せ場になるとベースをブイブイ。サウンド面を仕切っているのはデュプリーで、ステージ上でもアレコレを指示を飛ばしたりして、いかにもリーダーといった振舞いだ。アンコールの時も、メンバーが全員ステージ上に揃ってから、一番最後に登場する。ボクは「あれぇ、ソウル・サヴァイヴァーズって、頭に“コーネル・デュプリー&”ってつくんだっけ?」と錯覚しそうになった。

パイプ姿がトレード・マークのデュプリーは、本当にプライドが高く見栄っ張りだ。この日もパイプこそくわえてなかったが、黒光りするサテン地のシャツに白いスーツ、指には派手なリングをハメて、バシッ!とキメている。しかも終始クール。時々ニヤリとするくらいで、あとはほとんど表情を変えず、淡々とギターを鳴らしていた。MCはデュプリーの担当で「アリガトウ」なんて言ってくれるのだが、その態度は決して愛想がイイわけではなく、「どうだ、オレ様のギターはスゴイだろう」なんて言わんばかり。でもそれがサマになってるというか、全然イヤらしくない。本人は粋がってるつもりかも知れないが、なんか頑固親父の突っ張りみたいで、微笑ましいのだ。

そんなデュプリー、ステージ終盤になると、やおら時計を気にし始める。時計と睨めっこしながら、次の曲はどうしようか?なんて勿体つけるのだ。もちろん制限時間オーヴァーを気にするほど小心者ではない。「オレ様はカネの分しか弾かないぞ」という意志表明である。でもってお決まりのアンコールでは、「これで帰れよ」とばかりに、クルセイダーズでもお馴染みの<Way Back Home>を一発。これで一度引き上げて、さらにもう1曲「しようがねぇなぁ、じゃあコレが最後だぞ」なんて表情。どうにも素直じゃないのである。

そもそもデュプリーは結構な浪費家で、一時期カネに困ってミュージシャン仲間に無心していた、なんて噂も。そう聞くと、エッ!?と驚くかもしれないが、80年代以降はスタジオ・セッションなんてほとんどお呼びがかからないワケだし、自分でバンドを組んでライヴハウス周りをやらないと稼げない。なのに昔バリバリだった頃のプライドがあるから、客にはそうしたところを一切見せず、悠然と振る舞う。今じゃ暮らしぶりは落ち着いたたらしいけど、ガンコなのは相変らずみたい。カナザワ的には、チンチクリンな顔がどうにも“ねずみ男”に見えてしまうのだけれど、プレイはサスガ!のひと言。ピックもスナップも微動だにせず、中指だけがプロペラのように回転してバッキングする奏法、ボクはあんなの初めて見ました。それに今回はステージに近い席で観たため、ギター・ソロではフレーズを歌いながら弾いてるのが分かった。そんなところはやっぱりブルースの人ですね。

さて、このソウル・サヴァイヴァーズ。音楽的にはデュプリー中心だが、実際の仕切り役はバディのようだ。デュプリーとレイニーという曲者2人のメンツを立てながら、自分は一歩下がって小間使いに徹してる。好々爺みたいなマッキャン、ムードメイカーのキューバーが、それをうまくサポートしてる感じだ。とにかくこんなゴキゲンなバンド、メンバーたちのボディとソウルが続く限り、いつまでも頑張って欲しいと思う。ボクも彼らの活躍を最後まで見届けるつもりです!