64aab560.jpg夜になって急に外出するハメになり、都内某所まで往復2時間半の一人ドライブ。この時とばかりに、買ったままになっていたこのCDを持ち込んだ。いやぁ、Handshakeのブラック物のリイシューも、トリラーク、ジョニー・ブリストル、リヴェレーションと続いて、いよいよ来るところまで来た感じだなぁ。
このアルバムは、エムトゥーメイ一派のハワード・キング&エド・ムーアやオージェイズのエディー・リヴァート(デュエットもあり)がプロデュースした逸品ということで、某ガイド本に取り上げられ、一気に有名になったもの。かくいうカナザワも、実はそれで知ったクチである。82年作だから、当然こうしたブラック・コンテンポラリー物はシッカリ追ってたはずだが、ボクや自分の周辺で取り沙汰されたことはなかった。実際リアル・タイムでもあまり出回らなかった盤らしく、ガイド本掲載を機に中古盤屋でかなり高値を呼ぶことに。ボクもこのサラを初めて見た時は、ズタボロ盤に3万円というトンデモ値段だったのを覚えている。

で、肝心な内容は、手堅くまとめた好盤といった印象。アレンジは知る人ぞ知るダン・ピアソンJr.なので、安定感はバッチリ。カリン嬢はちょっと声が荒れるけど、それなりに歌える人でもある。だけど、レア盤にはよくありがちな“噂先行”型ではあるのも確か。ガイド本に書かれていたように、「隠れた名盤」と大騒ぎするレベルには思えなかった。点数つけるのは趣味じゃないが、目安とすれば100点満点で80点前後。5段階評価で「4」といったところか。

聴いた人がほとんどいないから、噂が噂を呼んじゃう。でもそれがCD化されると、みんな大きな期待を持って接するから「アレ!? この程度?」って思われてしまう。けれどそれはカリンの所為ではなく、聴く側の勝手な妄想だ。ボクも何年か前にやっとアナログを手に入れた時は、値段と内容のギャップを確かに感じた。けれど2度3度と聴くうちに、やっぱりコレはイイ盤だと実感できた。初対面は先入観とのギャップに戸惑うが、2度目3度目は自分で感じたホントの姿が見えて来るもの。きっと誰もが一回聴いてお蔵入りしたレコードやCDをお持ちだと思うが、先入観を取っ払って接すれば、意外な発見があるかもよ。

だからコレは、まさに80年代初頭のニューヨーク・ファンク・シーンをミュージシャン・サイドから剥ぎ取った一枚である、というのがボクの評価。もしキラー・チューンがあれば、世間の捉え方はもっと違ったものになっただろう。カナザワもレビューを書く身だから、アーティストとリスナーの間を取り持つ仲人役である。もちろん個人的な嗜好の違いは如何ともしがたいが、両者の出会いを阻害したり、誤解させるような表現だけは避けたいもの。とはいえ、メーカーの堤灯持ちにはなりたくないけど。