82cdccad.gifとっくにゲットしてたが、まだアップしてなかったな。良ければ速攻で書く気になってただろうから、カナザワにとってデキはそれなりということ。決して悪くないし、新しい出会いがたくさんあって話題性も豊富。メンバーだって気合いが入っている。でも意外性が多いということは、その分、アースらしさは希薄なワケだ。
実はジャケットのイラストを見た時、なーんかイヤな予感がしてたんだよな。だってストリートっぽいでしょう？ 確かにこのご時世、彼らのようなベテランでも変化しなきゃ人気を保てないのは、よーく分かっている。でも肝心なのは、新生面と“らしさ”を守る部分との兼ね合いやバランスだ。ボクは変化には寛容なリスナーだと思うし、スムース・ジャズみたいに進化や個性がないのは一番イヤなんだけど、今度のアースは個人的にかなりビミョーなセンなのです。

振り返ると、アースはかつて活動再開後にヒップホップが台頭してきた時、『HERITAGE』という偉大なる失敗をやらかしている。多分この新作は、あの時以来の大チャレンジだろう。『HERITAGE』で企画倒れになったR&Bの最新スタイルを取り込む手法も、ジャム＆ルイス、ラファエル・サディーク、ブラック・アイド・ピースらをプロデュースに迎えたせいか、実に周到。たっぷり時間をかけたこともあって、全体的に風格漂う力作になった。おかげでコチラは何度も発売延期を繰り返され、少々イラついたりもしたけれど。

で、買って聴いてみたら、やっぱり「何だかなぁ…」という印象。『HERITAGE』よりずっとずっと良いけど、今ドキのメインストリームR&Bやヒップホップ好きなら、もっとストレートに入っていけるだろう。でもボクらのようなオールド・ファンには、ちょっと捕らえ所がないんだな。もちろんフィリップ・ベイリーのファルセットやカリンバの音色など、アースのシグネイチャーはアチコチに刻まれている。モーリス・ホワイトの歌声が弱々しいのは仕方ないが、それ以上にモーリスの存在感が薄いのがイタイ。まぁ、だからこその豪華プロデューサー陣なワケで、痛し痒しといったところかな。

そんな中、ブライアン・マクナイト絡みの＜To You＞が、＜After The Love Is Gone＞など往年のアースの名バラードをツギハギしたようで、思わず爆笑。当然ボクらのような昔のファンへのサービス・トラックであり、アースの伝統を伝える曲である。けれど、何もココまでやらんでも…という気がするなぁ。ケニーＧが参加した曲は、ほとんどスムース・ジャズであざといし。やってることがちょっと極端だよ。

彼らにしてみれば、モーリスの病気という片翼飛行を続けながら人気挽回を図らなきゃならないわけで、大変なプレッシャーの中で作った新作だと思う。代わりにフィリップ・ベイリーが頑張り、外部から力を借りた。そうした意味で新星アースの第１作と考えれば、かなりのデキの良さである。でも看板は昔のまま。そのギャップがリスナーを悩ませる。カナザワとしては、もうし少しアースっぽさが残っていれば「万歳三唱」だったのだが。

だから素直にいえば、アース聴きてぇ…と思った時に、『ILLUMINATION』には手は伸びない。間違いなくアースだけれど、これだと欲求不満が残ってしまう。ボクが求めるアース像は、もうココにはないのだ。でもそれが万人の共通意見とも思わない。その鍵は、過去のアースに対する思い入れにあるのだから。ぶっちゃけ、アースを初めて若いリスナーには、かなり馴染みやすい音のハズ。だからアレコレとやかく言う前に、まずは実際にこの新作『ILLUMINATION』を聴いてみて、個々に判断してほしい。この新生アースの評価は、そうやって少し先に決まるだろう。