94a6dfb1.jpg”The Piano"という何ともストレートな名前のユニットが、北欧デンマークから登場。アチラ出身でAORというと、メロディック・ロック系を思い浮かべる人が多そうだが、彼らは完全にフュージョン寄りだ。正確には、AORというよりアダルト・コンテンポラリー系のトリオ。当然ピアノが主体になっていて、メンバーがソフトなヴォーカルを聴かせたり、ソウルフルなフィーチャリング・シンガーが歌ったりする。

イメージ的には、David BenoitのアルバムでDavid Packが歌ったヤツとか、Dan SiegelのアルバムでKenny Rankinが歌ったヤツとか、あるいはRandy Goodrumが歌っているDave Grusinのアルバムとか、ああいうゆったりしたヴォーカル入りのフュージョンといった雰囲気。そのサウンドはインテリジェントでリリカルなピアノが中心になっていて、北欧産らしくヒンヤリした空気感に包まれている。ジャケの通り、リゾートな海ではなく冬とか早朝の海といったテイスト、ひとり感が漂う音だ。

The Pianoという名は、このバンドのサウンドは、すべてリーダーのモーテンン・ケアソーのピアノから生まれてくることから名づけられた。80年代はデンマークの人気ポップ・グループで活躍していた彼が、歳とともにこういう音へ向かったのは、良く理解できる。ガツンと聴きたい!というのではなくって、いつも自然に鳴っていて欲しい音。世の大人たちの音楽ファンの諸兄も、もっともっとこういう音、こういうアルバムに親しんで欲しいな。