b8eea1bd.gif週末から今日に掛けて、音専誌系を立て続けに脱稿。今月はCDジャーナルでも大きいのを1本書いた。ネタはスムース・ジャズですが…。で、夕方からはチョッと息抜きモード。すでにライナーの仕事も数本入ってきてるが、締切には多少余裕があるのでね〜。ま、そう言ってノンビリしてると、またドタバタになるけど、やっぱ気分転換は必要ですっ(キッパリ!)

そこで取りい出したるは、デヴィッド・ボウイのDVD。もうすぐ紙ジャケ第2弾が出るし、『YOUNG AMERICAN』のデラックス・エディションも発売されるという。その関係でちょっとした原稿を書く予定もあり、再び自分の中でボウイ熱が上がってたりして。うぅー、やっぱ仕事ぢゃん!(←オレって真面目かも!)

で、この『SERIOUS MOONLIGHT』のツアーは、分かりやすく言っちゃえば、<Let's Dance>の時のツアーですね。タイトルも<Let's Dance>の歌詞の中のフレーズから取っている。しかもこのツアーは、ボウイのキャリアで最高のライヴと言われていて。以前にも書いたが、カナザワは『HEROES』の頃のライヴ、ちょうど『STAGE』が録られたツアー映像をむかし観たことがあって(NHKのヤング・ミュージック.ショーです)、スゴいインパクトがあったのだが、確かにコレを観ると、コチラの方が上を行ってるカモ。

とにかくスカイ・ブルーのスーツでバシッ!とキメた、ボウイのカッコ良さったら! 少しガニ股で踊る独特のダンスも、ボウイがやるとサマになる。しかもバック・ヴォーカルの2人や、時にミュージシャンまで交えてのシアトリカルなステージ。ミュージカル風というか、洒落た演劇を観ている感覚さえあったりして。『STAGE』と違ってジギー時代の曲はあまりやらず、『YOUNG AMERICAN』以降の曲が中心。「どんな音楽をやればいいのか、80年代は熱意もヴィジョンもなかった」という有名な発言があって、実際『LET'S DANCE』以降のボウイは急に低迷していく。けれど偶発的にせよ、ココでの彼は時代の波に乗って、輝きまくっているのは間違いないところだ。

バックのメンツも、さすが!という布陣。ベースにナイル・ロジャースの弟であるカーマイン・ロジャース(Rojasと綴ってロハスと読ませてる)、ドラムにトニー・トンプソン(シック〜パワー・ステーション)で、ココは『LET'S DANCE』を手掛けたナイル人脈。一見ダンサーみたいにパフォーマンスするヴォーカル2人は、ジョージ&フランク・シムズの兄弟。彼らはシムズ・ブラザーズとしてアルバムを出していて、そこにはシックのkyd奏者ロブ・サビアーノも絡んでいた。ちなみにカルロス・アロマー繋がりが、かのカシオペアがヴォーカル曲に挑戦した『SUN SUN』というアルバムをアロマーがプロデュースした時、ゲスト・シンガーとして歌っていたのが、バッド・イングリッシュ結成前のジョン・ウェイトと、このフランク君でした!
また後半に存在感を発揮するホーン隊も、実はレニー・ピケット(元タワー・オブ・パワー)率いるボルネオ・ホーンズの面々だったりする。

とはいえ、一番目を引くのは、激しいギター・ワークで駆け回るアール・スリック。ひとりだけ普段着でステージに上がってしまったような風貌も含め、唖然とするほどワイルド。この時ボウイはまだ無名だったスティーヴ・レイ・ヴォーンを発掘し、『LET'S DANCE』に参加させたが、ツアーにも同行させようとしてニベもなく断られている。その代役がアール・スリックだったワケだが、こりゃあ結果オーライじゃないですか!? ボウイが衣装替えをしているらしい<White Light / White Heat>での長〜いソロなんて、ホントどこまで行っちゃうの!って感じ。でも考えてみると、『STAGE』の頃のリード・ギタリストだったエイドリアン・ブリューといい、レイ・ヴォーンといい、あるいはこのアール・スリックといい、モダンでクールなボウイ・サウンドの中にあって、最もワイルドでエモーショナルな部分を担っている。普通あれだけ派手にやったらボウイから文句が出そうだから、おそやくボウイ自身の意図なのだろう。

収録されたのは、83年9月、カナダのヴァンクーヴァー。ということは、もう四半世紀近く前。でもこの充実したパフォーマンスやライティングは、多分今でも立派に通用します!