2007年03月11日

■ SAUDADE / STEPHEN BISHOP

090c35da.jpg洋楽ファンなら去年アメリカのタワー・レコードが倒産したことは、すでにご存知と思う。この時、いよいよ本格化してきた音楽のネット配信に戦々恐々としていた日本の音楽業界では、その原因はネット配信なのでは?という噂がまことしやかに流された。でも最大の原因は、ウォルマートのような大型スーパーが安価でCDを流通させていること。普通のヒット曲を買うなら、わざわざCDショップまで出掛けなくても近所で済むわけ。日本でもamazonほかのネット通販の占有率がどんどん高くなってるから、状況は似たようなもの。しかもアメリカでは、こんな結構な大物アーティストのニュー・アルバムが、特定スーパーだけで限定発売されているのダ。



それがこのスティーヴン・ビショップのニュー・アルバム『SAUDADE』。TARGETというチェーンだけで売られ、"Features"というシリーズ名でケニー・ロギンズ、デヴィッド・キャシディのニュー・アルバムの他、超豪勢な顔ぶれのコンピが出ている(後述)。既に"Red Mix"という次のシリーズも発売されていて、そちらではボブ・マーリィのトリビュート物や、ナッシュヴィルの作曲家たちの作品集がラインナップされているようだ。

さて、ビッシュの新作『SAUDADE』。タイトルからも分かるように、トロけるようなブラジリアン・テイストに満たされた一枚。長いことセルジオ・メンデスの参謀役を務めたことで知られるオスカー・カストロ・ネヴィスをプロデュース/アレンジに迎え、至福のひと時を演出してくれる。内容は、<On And On><Save It For A Rainy Day><Never Letting Go><Bish's Hideaway><One More Night><Separate Lives>というお馴染みの6曲をボッサ調に衣替えし、ステージではお馴染みだったもののオフィシャルでは初となる<Under The Jamaican Moon>のセルフ・リメイクを追加。さらに近年のデモ集に収められていた曲の新録ブラジリアン・ヴァージョン、そして新曲2〜3曲という構成になっている。そのスウィートなボサ・アレンジとビッシュの美メロ、ソフトな歌声が相まって、まさに極上のメロウネス。同じブラジリアン・カラーでも、マイケル・フランクスやケニー・ランキンよりもホノボノ感が漂うのは、まさにビッシュならではだろう。それこそ、「あぁ、スーパーらしい企画モノね!」なんてあしらえるような、軽くてテキトーな作品じゃないのだ。それが証拠に、ゲストにはエリック・クラプトンに当のケニー・ランキン、そしてアール・クルー。こりゃあメジャー・レーベルから出ても全然不思議じゃないような、れっきとしたブラン・ニュー・アルバムなのである。ハッキリ言って、初期名作『CARELSS』や『BISH(水色の手帖)』に次いでデキが良いというか、我がLightMellow's Choiceにラインナップした『RED CAB TO MANHATTAN(哀愁マンハッタン)』と比べても遜色のないクオリティ。最新の『YARDWORK』なんてメじゃないッスね。

同発のケニー・ロギンズ『HOW ABOUT NOW』も、ここ20年で一番良いかも。サウンド的には王道アダルト・コンテンポラリー路線(AORではなく)に、ちょい今どきのカントリー色が加味された印象。カナザワ的にはラスカル・フラッツを思い出した。制作もナッシュヴィルみたいだし。ま、ケニーの場合は、ロギンズ&メッシーナ時代から少〜しカントリー入ってるから、そうした意味では原点回帰とも言える。1曲だけリチャード・マークスのプロデュース。ベス・ニールセン・チャップマンとの共作もありんす。

そしてもひとつ、カナザワのアンテナに引っかかったのが、オムニバス『NEW MUSIC FROM AN OLD FRIEND』。ザッと収録アーティストを挙げると、バート・バカラック&ピーボ・ブライソン、ブライアン・ウィルソン、キャロル・キング、ウィリー・ネルソン、クリス・クリストファーソン、ポール・ウィリアムス&ジェーン・モンハイト、リチャード・マークスなど、まさに百花繚乱である。ケニーとビッシュの曲も、それぞれのアルバムから収録。しかもビッシュのはクラプトンがアコギを弾いてる<Save It For A Rainy Day>だ。ブライアンは<God Only knows>の新録と、バカラックとの共作曲。とにかくメジャーではなかなかできないコトを、TARGET限定盤でやっちゃってるワケで。アルバムの総プロデュースがフィル・ラモーンだから成し得たことだが、冷静にこのラインナップを俯瞰すれば、キャリアも知名度もあるが現在は特定レーベルとのディールを持たない人がほとんどだと気づく。要は金を持ってるスポンサーと、有名アーティストをまとめ挙げる制作者がいれば、何とかなっちゃうんだな。でもココからキャロルやブライアンの新作が出たら、やっぱ驚いちゃいます。

そういえば、去年出たジェームス・テイラーのクリスマス・アルバムも、原型は04年に出たHALLMARK限定商品。おそらく今後も、スポンサー主導の独占販売は増えていくだろう。そこで注目したいのは、スポンサーとアーティスト、そしてファンのニーズが合致しているように見えること。そこからハミ出してしまうのは、自社の利益ばかり追求するレコード会社と従来型の流通システム、魅力に乏しいCDショップ。頑張って店頭展開してるのは、ホンのひと握りの外資系ショップだけだからね。日本の関係者さんも、そこをマジに考えないとお先真っ暗でしょ?

ちなみにこのTARGET限定商品、現時点ではeBayで買うのが一番手っ取り早くて安いようです。また、TARGETの一連の作品を制作している180 Musicのサイトは、コチラから。

k.loggins_howaboutnowV.A._newmusic_oldfriend


lightmellow at 10:34 │Comments(5)TrackBack(1)clip!AOR Light Mellow  | New Release

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1. チチカカ湖はどしゃぶり?!  [ 趣味は音楽ッッ!!! ]   2007年03月11日 16:58
●ちあきなおみ ●あまぐも ●COCP 31131 ●2100円 ●(1978年) どうやら朝方はどしゃ降りだったとかそうじゃなかったとか・・ 今はあまぐもがどんよりとたちこめているだけなので 朝方の事ははかり知れませんが 寝てたんで関係ね??や!!!って感じ

この記事へのコメント

1. Posted by TKNG    2007年03月11日 16:47
5 ステファンビショップの記事のコメント欄ですが失礼しまして、せっかく紹介してもらって購入したものなのでちあきなおみ「あまぐも」でブログの記事を作りましたので、トラックバックさせて下さい、よろしくお願いします。

おれの場合TBは失敗してしまうかも知れませんが…。
2. Posted by akira-uc    2007年03月12日 23:06
3  最近、「これほどの実績がある人が」と思うようなアーティストが業界ではなく、自主制作で作品を発表しているのが目立ちます。業界は利益重視。アーティストやそのファンの気持ちなど気にもかけない。ファンは離れる、アーティストも傷つき業界からいなくなる・・。結果、魅力的な音楽が無くなり音楽も売れなくなる・・・悪循環ですね。しかし、一方では形にとらわれず発表する・・・そんな努力をする方たちも居ます。嬉しくなっちゃいます。スティーヴンもそんな一人じゃないでしょうか。しかし、そんなCDが手に入れずらいのも現実。良いものを聞こうとすることは苦労もつきまとうのでしょうか・・・。
3. Posted by k1ono    2007年03月13日 04:37
このCDはアメリカの古いトレード仲間を通じて何枚か取り寄せの段取りで話を進めております。あまりこれで儲けようというつもりもありませんので、イーベイとかやられない方でお困りの方は当サイトにご相談下さい。(って、こんな書き込みしてすいません)
4. Posted by kanazawa    2007年03月13日 09:30
>akira-ucさん
書き込みどうも! ホント、悪循環ですよね。だからこそ、我々みたいな人間と心あるリスナーが頑張らないと…。でもある程度時期が経てば、多少形を変えて一般的なCD流通にも乗ってくると思うんですけどね。J.T.みたいに。

>K1
苦しいときのcruisin'頼み。よろしくです!
5. Posted by 不死鳥    2007年05月04日 06:37
GWを利用して、こちらには初めてコメントさせて頂きます。いつも、面白く拝読させて頂いております。
私もこのTargetのFeaturesシリーズを聴きました。Stephen Bishopは、多くの曲が既に他のアルバムに発表済だった事もあり、大きな発見は無かったものの、ここ最近のアルバムとしては良く纏まっているなと言う印象です。(これは、コレクター向けのアイテムかな?) Kenny Logginsは、最近の彼の傾向よろしく、Heart Warmな仕上がりで、我が道を行くと言う感じですか。
そして、個人的には最も驚いたのはDavid Cassidyで、Remix集と言う事もあり、「人気家族パートリッジ〜Partridge Family」等の海外ドラマを観て育った世代ですので、余りの変貌振りに、現代風にしてしまうとこんなんなるの?と言う感じでしたネ。
今後もJamie CullumやJason Moraz等のReleaseが続くとの事なのでこちらにも期待したいと思います。

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