fbc2aa8d.jpgアッ!という間に完売になったポリスの紙ジャケも、どうやら無事に再プレスされたようで、今アチコチのCDショップを賑わせている。再結成して2月のグラミー賞授賞式に出演したり、ツアーの情報が流れたりと、非常に盛り上がる中、彼らの映画『インサイド・アウト』も公開中だ。

カナザワもライナーの締め切りラッシュに追われる中、ひとまず月刊誌の入稿を終えたところで、しっかりTOHOシネマズ@六本木ヒルズで公開されてるのを相方と観てきた。なにせ2週間だけの封切りで、しかも夜の上映のみ。ココで見逃すと、DVDが出るまで観られなくなる可能性が高いのだ。

この『インサイド・アウト』は、ポリスの発起人であるスチュワート・コープランドが自らハンディ・ビデオで撮り溜めていた映像を集大成したもの。もしかして<Do Do Do, De Da Da Da>のPVでスチュワートが撮ってたカメラの記録が、この映画になったのかも。したがってメンバーの素の姿や赤裸々な人間関係などがストレートに伝わる、いわば内部資料的な作品といえる。特に今では超大物となったスティングの青臭い姿、初期ポリスの凄まじい勢いとメンバーの結束の強さなど、実に興味深い事実が生々しく描き出されているワケだ。

しかしその一方で、ドキュメントとしてはサイコーだけれど、作品として大々的に売り出すようなシロモノなのか? 少し煽り過ぎなのでは?という疑問が。監督スチュワート・コープランドとなっているけど、極論すればプライベート・ビデオを編集しただけ、というクオリティである。そこに詰まっているのは、ポリスのファンが彼らを更に深く知るためのネタであって、「ポリスってどんなバンド?」ということを知りたいヒトにとっては、あまりオススメできない。例えば「ポリスってスティングのいたバンドでしょ?」なんて尋ねちゃうような今ドキの音楽ファンは、あんましお呼びじゃないと思う。いわゆるヒストリー映画ではないのだ。
そのかわり、名アルバム『SYNCHRONICITY』の米盤ジャケットには恐ろしい数の種類があって、全く同じジャケに巡り逢う事はない(一説には93種あるそう)、なんてコトを知ってるコア・ファンなら、非常に楽しめる作品となる。アンディの剽軽さが場を和らげたりとかね。

カナザワが再確認したのは、ある意味このトライアングルは、クリーム以上に理想的なトライアングルだった、ということ。つまり、シンガー・ソングライターとしてもアーティストとしてもキャラ立ちの良い天才スティング、プロデュース能力に長けたスチュワート・コープランド、技術屋で2人の緩衝役でもあったアンディ・サマーズと、まさに3人が自分自身の役割を持ち、そのバランスで成り立っていたのだ。さらに彼らをバックアップする存在として、スチュワートの兄マイルス(故人)がいた。

現在はとかくスティングばかりが注目されるけれど、スチュワートがスティングと出会ってヒラメかなければ、ポリスは決して生まれなかったはず。レゲエを取り込んだ革新的なポリズ・サウンドも、外へ向けて強い影響力を発揮したが、実はスチュワートのドラミングがその象徴だったと思う。というワケで、耳の肥えた音楽ファンは、スティングの育ての親たるスチュワートにもっと注目してほしいなぁ〜。