2007年04月28日

■ MIGNONNE / 大貫妙子

7e7d31b9.jpg「売れるということは、商売の神様に、自分の何かを生け贄として捧げるようなものだという思いは、今も変わっていません。それだけの覚悟がいるということです」
RCAに残した作品群の紙ジャケ・リイシューに際して、セルフ・ライナーを寄せたター坊は、このアルバムの中にそう書き記している。



PANAMでの2作をまったく制約なしに自由に作れた彼女にとって、RCA移籍第一弾『MIGNONNE(ミニヨン)』は、初めて外部プロデューサーがついた作品でもあった。しかもそれが、かの音楽評論家、小倉エージ氏。しかしシュガー・ベイブは、当時の日本のロック・シーンに於いては大きくメインストリームから外れた存在だったから、評論家には激しく叩かれたらしい。つまり彼女にとっては、天敵が上司になったようなモノである。レコード会社もター坊を売りたかったから、第三者的な立場の人間を中に置いて、売れるモノを目指していた。

果たして彼女が曲を書いて持って行くと、あれやこれやとダメ出しの連続。いろいろ手直しを繰り返すうちに、楽曲本来のメロディ、歌詞、そして書いた時の動機も情熱も失われていったという。だがそこまで犠牲を払った作品なのに、これがまったく売れなかった。かくして彼女はこのアルバムを悔やみ、音楽業界に不信感を抱くように。ター坊の言葉を借りれば、業界とは「音楽をつくる現場と、それを受け取るファンの間に存在する、わからないもの」になってしまったのである。

ただしこのアルバム、いま客観的に聴けば、そう悪い出来ではない。…というか、カナザワ的にはむしろ好きな部類かも(苦笑) 確かに彼女らしくない曲はあるが、その一方で<横顔><突然の贈り物><海と少年>なんて名曲も入っている。業界側の言い分も、そう的外れでもなかったというワケだ。

このアルバムが生まれてから、もうすぐ30年。業界は肥大化・歪曲化を繰り返したが、そのアンチテーゼとして生まれたインディーズ・シーンも今や成熟の域に達している。多少の資金があれば、自主制作CDを作るなんて簡単だ。事実、名の通ったベテラン・アーティストたちには、自由な創作環境を守るために自主制作へ走る人が少なくない。おそらく彼女も、今の時代だったら次からそうしただろう。でもヨーロピアン路線を提案する別のプロデューサーが現れたことで、彼女はメジャーに籍を置いたまま、新たな未来を切り開いていくことになった。

でもどうなんだろう。金の流れや事務的な手続きはともかく、アーティストが自主制作で100%自由気ままに作っていて、本当にイイものができるのだろうか? やはりそこには意見を交換できる誰か(例えばプロデューサーとか)、主役に物申す第三者の存在があった方が、より良いモノが生まれるのではないのか。もちろんそれは、アーティスト表現の本質をネジ曲げるものであってはならない。しかしアーティストが自分で描いている音世界が一番かというと、必ずしもそうではない。肝心なのは、関係者がみんな一致団結して「良い作品を作ろう」としているかどうか。「売れる」というのはその次である。
だが現在のメジャー業界の体質は、売れるモノ=良いモノ。音楽の文化的発展より、会社の経済的発展が優先される。真摯なアーティストがインディーに走るもの無理はない。

それでもカナザワは、この件に関してはあまり悲観してない。メジャーが商売っ気を出してデカくなればなるほど、そこにインディーの活躍する隙が生まれるから。A&MもCTIも、最初はみんなインディペントだった。心あるミュージシャンやリスナーは、今もちゃんと正しい音楽のあり方を分かっている。時代が変わってシステムやメディアが変わっても、作り手と聴き手のベーシックな関係はそれなりに保たれているのだ。ター坊のいう「わからないもの」も、何処に目を向けるかによって、チャンと分かるようになる気がする。

…な〜んて、ゴールデン・ウィーク初っ端のテーマではないな。でもカナザワは、近場に出かけるのが関の山で、ほとんどバカンスらしいバカンスはないっすから(泣)

ちなみにこの紙ジャケ・リイシュー、すべてご本人監修のリマスターで、かなり満足度の高いサウンドに仕上がっています。





lightmellow at 23:52 │Comments(5)TrackBack(0)clip!和モノ・City Pops  | Reisssue

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この記事へのコメント

1. Posted by m.m    2007年04月29日 16:37
w私にとっての一枚はアバンチュールだったですね。ちゃっかりYMOのメンバーが出てきたり
で恋人達の明日、チャンスなんて曲は大好きでした。
2. Posted by 浅野ayu    2007年04月30日 01:33
三部作はどれも捨てがたいですね〜。紙ジャケ・リイシューでamazonのカートに入れたまま...やはり買わねば。
3. Posted by kanazawa    2007年04月30日 09:32
カナザワ的には、もろヨーロッパ路線はそれほどのめり込めなかったので、PANAM時代の2枚と『ROMANTIQUE』までなんです。もちろん良くできてるし、嫌いではないですが。
でも最近のター坊、再びキテます!

紙ジャケは「あるうちに買うとけや!」ですよ。ところでayuさんって、もしかしてあのayuさん?
4. Posted by 浅野ayu    2007年04月30日 11:58
そうです〜、ご無沙汰してしまってすみません〜。まりやよりター坊なんです。
5. Posted by TKNG    2007年05月02日 16:29
5 なんか俺が入れる話題が多くてウレシイですね♪


ヨーロピアン路線以前の大貫さんのものはベスト版しか持ってないのでちょっと欲しいかなと

金澤さん的なオススメはミニヨンってことなんですね☆


大貫さんの製作現場での葛藤の末に出来たアルバムってことを考えながら聴いた方がよさそうですね!!

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