a2b37527.jpgこの週末もひたすらにライナー書き。でもカナザワが密かに愛して止まないクリス・レインボーのネタだからして、全然苦労とは思わず、逆にあのクリスタルのようなハーモニー・ポップの世界にどっぷり浸かるのを楽しみにしてたりして。

数年前にemレコードで彼の一連のプロジェクト(ベスト、レア・トラック集、アンソロジー)が終わった時、「もう旧作の再発は一切行なわない」なんていうクリス自身の発言があって、ちょっと残念に思っていた。要するに、クリス自身が彼のオリジナル・アルバム3枚に対して、それぞれ何らかの不満を抱えていたため、イヤな曲を外すべく、原型通りのリイシューが見送られてしまったからである。

最初にオリジナル復刻されたセンチュリー盤は、会社がなくなってしまったためとっくに入手困難。3枚とも結構なプレミア価格になっていた。もちろんem発の3枚があれば、クリス・レインボー普及活動には充分すぎるほど。しかし日本の音楽ファン、特にマニアのオリジナル偏重を知っていたから、やっぱり当時のままの並びで聴けないと、どこか片手落ちのような気分になっていたのである。まして近年の紙ジャケ・ブームで、なくてもいいようなオリジナル帯まで再現されるようになり、オリジナル偏重には拍車がかかるばかり。
でもよく考えたら、クリスの場合は本人がマスター・ライツを買い戻したワケじゃなく、大もとの権利は最初の2枚が英ポリドール(現ユニバーサル)、3枚目は英EMIにある。だから本人には不本意でも、法的にはリイシューするのに何の問題もない。かくして紙ジャケ天国日本だけで、唯一2度目のオリジナル復刻と相成った。今回はユニバーサルでの企画なので、最初の2作だけの再発なのが残念だが、やっぱりマニアにはタラマンでしょう!

音の方は、もう兎にも角にもエヴァー・グリーン。後年クリス自身が歌うことになるアラン・パーソンズ・プロジェクトやパイロット、10CCといったブリティッシュ・ポップス系のファンならば、もうイチコロである。しかもクリスがひとりで構築するハーモニーの緻密さ、美しさといったら、もう唯一無比!(ちょい大袈裟!??) <Dear Brian>なんてナミダ溢れる名曲があるように、ビーチ・ボーイズからの影響は隠しようがない。アロハ姿で朝陽(夕陽?)を浴びているのも、自らビーチ・ボーイであることを表明しているようなモノである。

ところがクリスは、ビーチ・ガイと呼ばれるほどに不快な気分に陥ったそう。彼によれば、ビーチ・ボーイズを意識的して狙ったのは、<Dear Brian>と<Ring, Ring>(3作目『WHITE TRAILS』収録)のみだとか。アンタ、そりゃ〜ナイっしょ!。音楽は嘘つかないよ(苦笑)
クリスとしては、“アチラは5人、コチラはオレはひとり”という点をアピールしたいらしく、物真似と捉えられるのがイヤだったみたい。それどころか、ひとりア・カペラなんかやっちゃったりして、オレの方が凄いんだぞ!と言わんばかり。ま、彼ほどのコダワリの持ち主、完全主義者ならば、そう言ったって許されると思うが、なるほどスコットランド人らしく気位の高いお人であります。

ちなみに、我らが山下達郎が、<Marie>で本格的にひとりア・カペラを始めたのも、本作と同じ78年のこと。さらにこのアルバムでは、ジェフ・ベックに先駆けてサイモン・フィリップス&モー・フォスター、クラプトンより早くヘンリー・スピネッティ&デイヴ・マーキーという優れたリズム・コンビを起用。プロデューサー/アレンジャーとしても、並々ならぬセンスの良さをしている。

自分も「AORではない」と注釈をつけたうえで、サード『WHITE TRAILS』を『AOR Light Mellow』に掲載した。そのココロは、珠玉のメロディと計算されたハーモニー、的確で無駄のないサウンドが絶妙のバランスで調和し一体化していると思うから。それはまさしく、子供心を忘れないで持っている大人たちへのドリーム・ポップなんだな、きっと。

この『LOOKING OVER MY SHOULDER』と、ファースト『HOME OF THE BRAVE』の紙ジャケは、来月6月27日の発売予定。ただしユニバーサルさんは、メジャー他社よりも製造枚数を絞り込んでいるようなので、お早めのご予約をオススメしておきます。


ルッキング・オーヴァー・マイ・ショルダー(紙ジャケット仕様)
ホーム・オブ・ザ・ブレイヴ(紙ジャケット仕様)
Unreleased&Demos 1973-1983
The Best Of Chris Rainbow 1972-1980