2007年11月17日

■ SUZY / TERENCE BOYLAN

a2fbf27a.jpg稲垣さんの紹介文を脱稿してホッとしたのも束の間、すぐに立て続けにライナーの締切が迫って来た。来週前半で3本。まずは最初の一本目、テレンス・ボイランの3rdアルバム(テレンス名義では2枚目)『SUZY』に取り掛かる。例によってWounded Birdからで世界初CD化。それを クリンク/芽瑠璃堂が国内仕様で流すのだ。



「へぇ〜、アレが出るんだ!」 でもそんな喜びと共に、ちょっと複雑な顔の人もいるだろうな。そう、コレはあの80年頃のウエストコースト・シーンに沸き起こったニュー・ウェイヴの波に晒された一枚。しかもリンダ・ロンシュタット『MAD LOVE(激愛)』とかアンドリュー・ゴールド『WHIRLWIND』みたいに、思い切り良くニュー・ウィヴに切り込んでいったのならまだしも、非常に未消化のままアルバムになってしまった印象がある。

イヤ、正確に言えば、未消化どころか、分岐点に立ち止まったままアルバムを作ったと言うべきか。とにかくアナログ盤のA面とB面で、まったくサウンドが違うのだ。

聞くところによると、テレンスは79年の時点で、既に 前作『TERENCE BOYLAN』路線のメロウなアルバムを完成させていたのだとか。ところが、突然L.A.ミュージック・シーンを襲って来たニュー・ウェイヴの威力に押され、リリースを棚上げ。新しいサウンドにアプローチした新曲を追加レコーディングし、双方を一枚のアルバムに押し込んだ。それがこの『SUZY』。したがってCD前半は「これがテレンス?」というようなシンプルなロックン・ロール。2曲目なんて、ストーンズやクラプトンの代表曲のフレーズまで飛び出す。それがB面に行くと、やっと期待通りのテレンスが現われて安心する、といった構図だ。

でも、当時のL.A.のシーンの流れを知る上では、これは恰好の資料だろう。ついでにガイド本『アサイラム・レコードとその時代』があると、もっと分かりやすいかも。そのアルバム・ガイドの項を見ていくと一目瞭然なのだが、このテレンスのアルバムから始まって、ダニー・クーチ『INNUENDO』、アンドリュー『WHIRLWIND』、リンダ『MAD LOVE』などが、ほぼ一年の間に出ている。さらにアサイラム初のニュー・ウェイヴ・アーティストと言われたサムナーも。オマケにイーグルス『THE LONG RUN』やウォーレン・ジヴォン『ダンス・スクールの悲劇』あたりも79年後半〜80年だったりして。
アサイラムの外に目を向けても、リンダのイメ・チェンを主導したといわれるマーク・ゴールデンバーグ率いるクリトーンズのデビュー、ニコレッタ・ラーソン『RADIOLAND』(タイトル曲はサムナーのカヴァー)が同年。兎にも角にもウエストコースト・ミュージックの良き時代が終焉したことを伝える事実ばかりで、確実に新しい時代がやってきていたのが伝わってくる。そうした中で考えないと、このアルバムの存在意義が見えて来ない。

…にしても、テレンスはホントにニュー・ウェイヴに感化されたのだろうか。何だかリンダを中心にして、この手をサウンドを盛り上げていこうというアサイラム、曳いてはワーナー・グループの戦略だったような気もするのだけれど。だってテレンスがストーンズやクラプトンを持ち出す必要なんか何処にもないワケで、何だか商売に走る連中に対する当てつけのように思えちゃうんですが…。



lightmellow at 23:50 │Comments(3)TrackBack(0)clip!AOR Light Mellow  | Reisssue

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by Kapono    2007年11月18日 21:10
このALBUMは、A面6曲、それぞれ、数十秒しか、聞いたことがありませんでした。
B面は、一通り聴いたのですが、A面の影響もあり、ALBUM自体ほとんど新品状態でした。改めて、今回、25、6年ぶりに聴いたのですが、やっぱり、A面は、好きくないです。
ところで、歌詞がB面の2曲しか載っていないのは、なぜでしょうか?
2. Posted by 不死鳥    2007年11月20日 15:38
→同感です!
非常に素晴らしいアルバムです(B面は!?)

〜デイン・ドナヒューがリタイアした様な声で、往年の声が出なくなってしまった今、テレンスが健在のうちに現代のSound Productionで、この路線のNew Albumを作ってくれないかと思うのは僕だけでしょうか?
<Asylumの誕生から隆盛への流れは、ず〜と僕の青春時代の思い出でした。未だにこの時代の作品を耳にすると郷愁にかられます。>
3. Posted by kanazawa    2007年12月02日 18:26
すっかりレスが遅れてスミマセン…

テレンス、もうこれっきり新作出してませんものね。
99年の自主制作ベスト盤に、何曲か新曲が入ってましたが、
あれから数えてもずいぶん経ってしまいました。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
HOME
Light Mellow on the Web
6月13日 【Program】を更新!
Topics
5e485ad5.jpg

■シャカタク初のオールタイム・ベスト2枚組
『アルティメイト・ベスト』
選曲・監修しました。
オリジナル・アルバム10作も
紙ジャケで同時リイシュー。
LightMellow's Choice
カナザワがプロデュースする
     厳選CDシリーズ

 ■LightMellow's Choice■
   大絶賛予約受付中!
  デヴィッド・ロバーツ
 26年ぶりの最新第2作
『BETTER LATE THAN NEVER』


試聴はコチラから


★新装プラケ盤が同時発売。








ブログ記事へ





Recommend
 ◆いまのイチ押し◆
ロビー・デュプリー最新作
『TIME AND TIDE』



ブログ記事へ

大好評・発売中。