5488802c.jpg所用を済ませたあとミーティング2件をこなす。うち一件は、有名な外苑の銀杏並木にあるカフェで待ち合わせ。並木は見事に色づいていて、遅い紅葉を楽しむ人がたくさん行き交う。うーん、こんなロマンチックなトコ、野郎同士で待ち合わすトコロじゃないな。ところが相手は高校がすぐ近くだったそうで、この辺りはジャージでランニングしてたとか。しかも目的のカフェは、本日貸し切りというオチで

その後はレコ屋にも寄らず、直で家へ戻ってレビュー関連に取りかかる。でもコイツがすごく強力で、思わず見入ってしまったんだな。実は昨日も一度観たのだけれど、なんだか感嘆符ばっかりのレビューになりそうだったので、少し冷静になれるよう一晩おいてみたのだが、大して効果なかったみたい。とにかく、あのスタッフの初公式ライヴ映像、である。その重要性が理解できるヒトは、ただただ必見。

コーネル・デュプリー、エリック・ゲイル、リチャード・ティー、ゴードン・エドワーズ、そしてスティーヴ・ガッド。ツイン・ドラムの片割れ:クリス・パーカーだけは不参加なれど、5人中ゲイルとティーはもう雲上の人なワケで。それに動くゴードン・エドワーズって、初めて観たかも…。

76年のモントルー・ジャズからは、先頃もウェザー・リポートの貴重な映像が出て来たけれど、レア度でいったらはるかにスタッフの方が上だろう。何せ初のオフィシャル・ライヴ映像である上に、彼らにとっては実質的なメジャー初舞台だったのだから。ニューヨークのクラブ、ミケールズあたりを中心にギグを重ねてきた彼らが、いよいよデビューを目前に控え、大々的に表舞台に打って出た初のステージが、このモントルー。その時の熱演がメディアによって世界中に伝えられ、地味なセッション集団のデビューが、一躍“スーパー・グループ登場”に擦り変わったのだ。いわばスタッフ伝説の第一歩が、この映像に刻まれている。

全8曲中、スタッフのファースト・アルバムで聴けるのは、名曲<Foots>と、先にデュプリーの『TEASIN'』で披露していた<How Long Will It Last>(ゲイル作)の2曲のみ。あとはスティーヴィー・ワンダー、アース・ウインド&ファイアー、トラフィック、ビリー・プレストン(orジョー・コッカー)、アイズレー・ブラザーズなどのカヴァーだが、どれも完璧にスタッフのサウンドになっているから見事。中でもスティーヴィーの<涙をとどけて>は彼らの定番曲になり、後の日本公演でレコーディングされた『LIVE STUFF』でも聴くことができる。ガッドとゴードン・エドワーズもファンキーなグルーヴ、そこに追い打ちをかけるティーのゴスペル・ピアノ、そして揃いも揃ってイブシ銀のギターを聴かせるゲイルとデュプリーも、微妙な個性の違いを浮き彫りにして。

ゴスペル・チューン<Oh Happy Days>では、この日同じステージに出ていたベテラン・シンガー:オデッタが顔を出すものの、まるで演奏に入り込めなくて可哀想なくらい。ゲイルがカッティングの手を休めて彼女が前へ出るのを手伝うものの、メンバーはヴォーカルをフィーチャーする気配は全然ない。「オレたちの晴れ舞台のジャマをするな」みたいな感じだから、主催者側のゴリ押しだったのかも知れないなぁ。いずれにせよ、最も勢いのあったスタッフの生の姿が拝める、珠玉の約60分である。

ある意味、ジェイ・グレイドン・オールスターズ以上に貴重な映像かも。発売は12月19日。