このところ、アレサ周辺が異様に盛り上がっている。アトランティック時代の歴史的名盤『LIVE AT THE FILMORE WEST』完全盤と発掘音源『RARE & UNRELEASED RECORDINGS』のリリース、ネット・オンリーのRhino Handmadeでも初出のライヴ・アルバム『OH ME OH MY:ARETHA LIVE IN PHILLY, 1972』が出たばかりで、自分も彼女のパワフルな歌いっぷりにタジタジになった。
そんなタイミングで間もなく登場して来るのが、80年代アリスタ音源の紙ジャケ再発。オールスター共演によるデュエット曲の編集アルバム『JEWELS IN THE CROWN』(ファンテイジア、ジョン・レジェンドとの新曲2曲入り)が出ることもあり、期せずして“アレサ祭り”みたいな状況になっている。
ただし今回出るのは、82年作『JUMP TO IT』から89年作『THROUGH THE STORM(愛の嵐)』までの6枚のみ。ヲイヲイ、アリスタ最初の2枚はどーしたのよ。まぁ、ポップ・ファン向けに売りやすいのはココだろうけど、アトランティック時代のファンやフリーソウル系から入って来た世代は、むしろ最初の2枚の方に触手が伸びるはず。『ARETHA』に入っている<What A Fool Belives>のカヴァーなんて、マット・ビアンコが裸足に逃げるほどカッコ良いのにね。メンツもフォスターとルカサー、ジェフ・ポーカロにルイス・ジョンソン、オマケにサンボーンまでいるのだし(オリジナルCDはレアなので、カナザワ監修で5年前に出たコンピ『A TOUCH OF SOUL』で聴けます)
…とはいえ、評価が70年代前半までに集中しがちなアレサゆえ、このリイシューは結構嬉しいかも。そりゃあカナザワだって、彼女の黄金時代がアトランティック前期だってコトに異論はない。でもアリスタ時代にはアリスタ時代なりの面白さがあるってモノ。ルーサー・ヴァンドロスと相見えた『JUMP TO IT』や『GET IT RIGHT』は既に評価を確立しているけれど、ナラダ・マイケル・ウォルデンがプロデュースしたコレだって、世間が“売れセンに走った”と言うほどいい加減なアルバムじゃないと思っている。
確かにアレサとルーサーのマッチングはジャスト・フィットしていた。でもそれはある意味、当然だ。だってルーサーは彼女に憧れ続けて成長してきたのだし、シンガーとしてオーセンティックな味を持っているから、似た者同志と言うか、本当に良き理解者たらんとアレサに接したはずである。でもナラダは、クライヴ・デイヴィスの命を受けたか、売れるアルバムを作るべく自分のやり方を貫いた。アレサも自分の持ち味を全開にし、中途半端にナラダの音作りへ合わせたりしなかった。それはおそらくアトランティック後期で、クインシーやラモント・ドジャーらとコラボレイトしたのに、何処か煮え切らない作品しかできなかったことの反省だと思う。この時期成功したのは、カーティス・メイフィールドとの『SPARKLE』だが、これを80's風にヴァージョン・アップしたのが、ルーサー作品ではなかったか。元々アレサも時代性には敏感だから、自分のヴォーカル・スタイルとハヤリの音との接点は気にしていたはずである。
かくして生まれたアルバムと聴くと、自由奔放なアレサとナラダで、それぞれ違う方向を目指している印象がある。同床異夢とでもいうか。例えばナラダがホイットニーを手掛けた時のような一体感は、このアレサの作品からは感じられない。
でもきっと、それがナラダの狙いだったのだろう。あのパワフルなヴォーカルをポップなメロディに閉じ込めてしまうより、むしろ曲をブチ壊しちゃうくらい歌ってくれた方が、彼女の魅力を強くアピールできる、そう踏んだのだ。そしてそれを煽るようなパートナーを引っ張って来た。Eストリート・バンドでブルース・スプリングスティーンの向こうを張ったクラレンス・クレモンズである。その後のアレサは、キース・リチャーズやジョージ・マイケル、さらに御大J.B.やエルトン・ジョンなどと共演を重ねて行くが、その原点が<Freeway Of Love>だった。
一見、全然噛み合ってないアレサとナラダだが、ナラダにしてみれば、手に負えない猛獣を檻から出して自由にしてやっただけのこと。その行動範囲の外側には、実はちゃんとフェンスが張ってあって、いわゆる放し飼いになっただけなのだ。アレサもそれを分かっているから、遠慮なく豪快に歌い飛ばす。彼女の歌は、当然アトランティック後期よりもハジケているよ。それにナラダのオケだって、ホイットニーに比べれば、ちゃんとアレサの重量級の歌を支えるべく、骨太な作りになっている。売れセン狙いだからといって、安直な作りなどしてないのだ。
ちなみに、アトランティック後期のアルバム数枚がなかなかCD化されないのは、どうも権利上の問題があるからという噂。確かにワーナー発のコンピは、どれを見てもその数枚からの楽曲が入っていない。一説に拠ると、作品の出来に不満を持っているアレサが再発を恐れ、マスターの権利を買い取ってしまった、なんて話もある。未だにワーナーに権利が残るアトランティック後期の3枚が、何故かヴィヴィドから紙ジャケ化されたのも(ワーナーから音源提供されている)、ここらに理由がありそうだな。
フリーウェイ・オブ・ラヴ(紙ジャケット仕様)
ジャンピン・ジャック・フラッシュ(紙ジャケット仕様)
愛の嵐(紙ジャケット仕様)
ジャンプ・トゥ・イット(紙ジャケット仕様)
ゲット・イット・ライト(紙ジャケット仕様)
ゴスペル・ライヴ(紙ジャケット仕様)
ただし今回出るのは、82年作『JUMP TO IT』から89年作『THROUGH THE STORM(愛の嵐)』までの6枚のみ。ヲイヲイ、アリスタ最初の2枚はどーしたのよ。まぁ、ポップ・ファン向けに売りやすいのはココだろうけど、アトランティック時代のファンやフリーソウル系から入って来た世代は、むしろ最初の2枚の方に触手が伸びるはず。『ARETHA』に入っている<What A Fool Belives>のカヴァーなんて、マット・ビアンコが裸足に逃げるほどカッコ良いのにね。メンツもフォスターとルカサー、ジェフ・ポーカロにルイス・ジョンソン、オマケにサンボーンまでいるのだし(オリジナルCDはレアなので、カナザワ監修で5年前に出たコンピ『A TOUCH OF SOUL』で聴けます)
…とはいえ、評価が70年代前半までに集中しがちなアレサゆえ、このリイシューは結構嬉しいかも。そりゃあカナザワだって、彼女の黄金時代がアトランティック前期だってコトに異論はない。でもアリスタ時代にはアリスタ時代なりの面白さがあるってモノ。ルーサー・ヴァンドロスと相見えた『JUMP TO IT』や『GET IT RIGHT』は既に評価を確立しているけれど、ナラダ・マイケル・ウォルデンがプロデュースしたコレだって、世間が“売れセンに走った”と言うほどいい加減なアルバムじゃないと思っている。
確かにアレサとルーサーのマッチングはジャスト・フィットしていた。でもそれはある意味、当然だ。だってルーサーは彼女に憧れ続けて成長してきたのだし、シンガーとしてオーセンティックな味を持っているから、似た者同志と言うか、本当に良き理解者たらんとアレサに接したはずである。でもナラダは、クライヴ・デイヴィスの命を受けたか、売れるアルバムを作るべく自分のやり方を貫いた。アレサも自分の持ち味を全開にし、中途半端にナラダの音作りへ合わせたりしなかった。それはおそらくアトランティック後期で、クインシーやラモント・ドジャーらとコラボレイトしたのに、何処か煮え切らない作品しかできなかったことの反省だと思う。この時期成功したのは、カーティス・メイフィールドとの『SPARKLE』だが、これを80's風にヴァージョン・アップしたのが、ルーサー作品ではなかったか。元々アレサも時代性には敏感だから、自分のヴォーカル・スタイルとハヤリの音との接点は気にしていたはずである。
かくして生まれたアルバムと聴くと、自由奔放なアレサとナラダで、それぞれ違う方向を目指している印象がある。同床異夢とでもいうか。例えばナラダがホイットニーを手掛けた時のような一体感は、このアレサの作品からは感じられない。
でもきっと、それがナラダの狙いだったのだろう。あのパワフルなヴォーカルをポップなメロディに閉じ込めてしまうより、むしろ曲をブチ壊しちゃうくらい歌ってくれた方が、彼女の魅力を強くアピールできる、そう踏んだのだ。そしてそれを煽るようなパートナーを引っ張って来た。Eストリート・バンドでブルース・スプリングスティーンの向こうを張ったクラレンス・クレモンズである。その後のアレサは、キース・リチャーズやジョージ・マイケル、さらに御大J.B.やエルトン・ジョンなどと共演を重ねて行くが、その原点が<Freeway Of Love>だった。
一見、全然噛み合ってないアレサとナラダだが、ナラダにしてみれば、手に負えない猛獣を檻から出して自由にしてやっただけのこと。その行動範囲の外側には、実はちゃんとフェンスが張ってあって、いわゆる放し飼いになっただけなのだ。アレサもそれを分かっているから、遠慮なく豪快に歌い飛ばす。彼女の歌は、当然アトランティック後期よりもハジケているよ。それにナラダのオケだって、ホイットニーに比べれば、ちゃんとアレサの重量級の歌を支えるべく、骨太な作りになっている。売れセン狙いだからといって、安直な作りなどしてないのだ。
ちなみに、アトランティック後期のアルバム数枚がなかなかCD化されないのは、どうも権利上の問題があるからという噂。確かにワーナー発のコンピは、どれを見てもその数枚からの楽曲が入っていない。一説に拠ると、作品の出来に不満を持っているアレサが再発を恐れ、マスターの権利を買い取ってしまった、なんて話もある。未だにワーナーに権利が残るアトランティック後期の3枚が、何故かヴィヴィドから紙ジャケ化されたのも(ワーナーから音源提供されている)、ここらに理由がありそうだな。
フリーウェイ・オブ・ラヴ(紙ジャケット仕様)
ジャンピン・ジャック・フラッシュ(紙ジャケット仕様)
愛の嵐(紙ジャケット仕様)
ジャンプ・トゥ・イット(紙ジャケット仕様)
ゲット・イット・ライト(紙ジャケット仕様)
ゴスペル・ライヴ(紙ジャケット仕様)
さて、ある若手女優のデビュー・アルバムにグレン・バラードが係わっていると知り(結局は係わりませんでした)、彼について色々と調べてこちらにも何度かお伺いしました。AOR初心者でしたので色々と勉強になりました。ということでプラネット3のCDは自分が所有している数少ない金澤さんが解説を書かれたCDですが、J・グレイドンはD・フォスターだけでなく、この二人にも取り残されちゃったのねという文章が印象に残っています。パティ・オースティンのアルバムは再CD化のためかあまり話題になりませんでしたね。