931daad8.jpg今日もマジック・レディの執筆続行中。昨日も書いたように、このコーラス・グループは実質的にマイケル・ストークスのプロジェクトに近いから、彼女たちの旧作はもちろん、ネイチャー・ディヴァインやロン・マトロック、キース・バロウ、アクティヴ・フォース、L.T.D.、エンチャントメント、ブッカー・T、シェリック…と彼のワークスを片っ端から聴きながら、いろいろ考えを張り巡らせて書き進めている。

マジック・レディの場合、どれか一枚と言われれば、2枚目の『HOT 'N' SASSY』を押すのが一般的だろう。我がブラコン本でも、それを代表作とした。デビュー作はストークスがデトロイトに拠点を置いていたころに作られ、どちらかというとミディアム・スロウに重点が置かれていたと思う。それに対して2枚目は、完全にファンク・ベース。録音はL.A.で、お馴染みのスタジオ・ミュージシャンが名を連ねていた。ただこのメンツの割にはファンク度が濃ゆい感じ。そこがストークスの持ち味なのだ。

実際その2作目は、ジェフリー・オズボーン脱退後の新生L.T.D.『LOVE MAGIC』(81年)のあとに作られたらしく、その好影響が随所に潜んでいる。いわゆるセルフ・コンテインド・バンドとして実績のある連中だが、新シンガー:レズリー・ウィルソンの吠えっぷりがあまりに凄まじく、インパクト絶大の一枚だった。おそらくストークスにとっても、彼らとのコラボレイトは得るモノが大きかったはず。そしてその成果を自らのプロダクションに反映させたのが、マジック・レディの2作目だったと思う。そして時代はその後、急速にシンセやリズム・ボックスなどテクノロジーの導入へ向かうワケだが、L.T.D.やマジック・レディでの手法を活かしつつ、それを実践してみせたのがアクティヴ・フォースや上掲のエンチャントメント『UTOPIA』でなかったか。

とにかくストークスは、温故知新というか、オーセンティックなソウル・マナーと新しいスタイルを融合させるのが上手い。だからこそオールド・ソウル・ファンにも歓迎されるのだ。彼が手掛けた名盤の誉れ高い作品は、どれもこれもそうした方針が上手く回った時に誕生している。シェリックなんて、まさにその典型だろう。そしてそのあとに続いたストークス・ワークスが、今回リイシューとなるマジック・レディ6年ぶりの3枚目なのである。

そうしたストークス・ワークスの中でも、マジック・レディ以上に長きの付き合いとなったのが、このエンチャントメントだった。途中別々の道を歩んだこともあったが、ここで再びタッグを組み、この名作を産み落とす。作曲クレジットには、マジック・レディの中核であり、奥方のリンダ・ストークスの名も。ソウル・マナーを活かしたヴォーカル&ハーモニーに、アーリー80'sの最も旬な音。それがこの『UTOPIA』を傑作たらしめた。

紙ジャケ再発盤は既に入手困難になりつつあるが、マジック・レディを聴く前には是非とも聴いておくべき一枚。ちょうどL.T.D.『LOVE MAGIC』も、何やらケーハクな名前の再発シリーズ(でもそのココロはよく分かってしまう自分って…)で出し直されるようであるし。いきなり36タイトルって言うのは買う方にとってはかなり大変だが、きっとヨーロッパ方面で盛んになってるブート対策の意味もあるのだろうな。現にカナザワが監修している某社シリーズでは、あのために何枚もの正規国内盤リイシュー(しかも紙ジャケ)が見送りになっているのだから…。