cf323d66.jpg♪Stand up in a clear blue morning♬という<Whie You See A Chance>の歌い出しそのままの、爽やかな秋晴れ。こんな日は近くにある川縁のサイクリング・コースをチャリで走ると気持ち良さそうなんだけれど、例によって忙しい上に、先週末からは突然ドタバタになってしまった。しかし、これに限っては乗りかかった船というコトもあり、缶詰になって速攻で片付けるしかないか、と。

案件は、1ヶ月後に発売が迫ったスティーヴ・ウィンウッドのアイランド時代の紙ジャケ再発。去年2月に4枚組の紙ジャケ・ボックスが出た時、総集編的なライナーを担当していたので、それを各アルバム用に至急リライトして欲しい、と言われたわけだ。

以前一度バラ売り再発が企画され、リライトの依頼まで受けていたが、着手する前にメーカーの事情で無期延期。それがSMH−CDでの出し直しを連発しているこのタイミングで、再びテーブルに上がってきた。あのボックスは値段やら仕様やらでファンの賛否が分かれたけれど、アッ!と言う間に売り切れたのは紛れもない事実。音楽的クオリティに加え、リマスターの効果も絶大だったから、この単発売りを待っていた方は少なくないだろう。

さて、ソロとしては2作目に当たるこのアルバム。1枚目は、中途半端に終焉を迎えたトラフィックの名残りみたいな作品だったが、全米7位の大ヒットとなった<Whie You See A Chance>が象徴するように、コチラはようやくソロ・アーティストとしてのスタンスが固まったモノといえる。作詞を除くと完全にワンマンで作ったアルバムで、エンジニアまで自分。それこそトッド・ラングレン張りのマルチ・ミュージシャンぶりだ。それが大ヒットし、ソロ・キャリアの行方を決定づけたのだから、彼もさぞ嬉しかったことだろう。

一方、次作『TALKING BACK TO THE NIGHT』は、本作『ARC OF A DIVER』の続編的内容ながら、ヌケが良くなく何か沈殿してしまった印象。楽曲もヴォーカルも悪かないが、その心持ちがストレートに伝わって来ない。そこで、演奏家としては器用なスティーヴが、実はアーティストとしては案外不器用だったことに気付くのだ。今になって考えれば、ソロ活動の最初もそう。トラフィックにキッチリ落とし前をつけないと前進できなかったのだから。外部からの刺激も、きっと彼にとってはモチベーションのひとつ。そうしたインフルエンスを咀嚼するにも多少時間はかかるが、上手く回れば『BACK IN THE HIGH LIFE』みたいな作品も生まれてくる。

したがってワンマンでシコシコ作った『ARC〜』がこれほど会心の作たり得たのは、スティーヴの中でコンセプトがシッカリ固まり、紛うことなく完成へ突き進んだためだろう。そのアイディアの元は、すでに1枚目の中に示されていた。

うん、やっぱりこの人、不器用だよ。でもだからこそ、信用に足るんだな。

アーク・オブ・ア・ダイヴァー(紙ジャケット仕様)
スティーヴ・ウィンウッド(紙ジャケット仕様)
トーキング・バック・トゥ・ザ・ナイト(紙ジャケット仕様)
バック・イン・ザ・ハイ・ライフ(紙ジャケット仕様)