dd3efc99.jpgピンク・フロイドのキーボード奏者、リチャード(リック)・ライトの訃報が飛び込んできた。えぇっ、ホントに!? デヴィッド・ギルモアのソロ・ツアーにつき合って、元気そうに鍵盤を操っていたのに…。でもあのDVDはリリースが最近だっただけで、収録されてからは早2年近く。闘病の話もなかったので突然の印象だが、うーむ、癌だったそうだからなぁ〜。享年65歳。

で、アチコチの音楽系ブロガーがこのニュースに触れているのだけれど、フロイドについて語ってはいても、意外と彼のソロ作をチャンと取り上げている所は少ない。要するに、そういうポジションだったワケだ。

でも78年に出たこの初のソロ・アルバムを聴くと、フロイドの叙情性はリックに拠る部分が大きかったのだと分かる。もちろん最もデカイのはブルージーなギルモアのリード・ギター。でもその後ろでスクリーンのように雰囲気を盛り上げるのが、リックの役割だった。ソロなんて弾かない(弾けない)けど、リックのいないフロイドはカサカサに乾いてテンションばかりキツくなってた。そう、シド・バレットを別にすれば、フロイドから真っ先に抜けたのはリックだったのだ。ロジャー・ウォーターズが全権を掌握した『THE WALL』のコンセプトに於いて、彼が創り出す霧のようなサウンドはもはや無用の長物。そのレコーディングには、もうその姿はない。

『狂気』や『炎』、『アニマルズ』にあって、その『THE WALL』で欠けていたモノが、ここには詰まっている。ギターは実際にフロイドのツアーでサポート・ギタリストを務めたスノーウィー・ホワイト。サックスにメル・コリンズ。ジャケはもちろんヒプノシス。ギルモアの代役はいるし、<Pink Song>なんて曲もある。でもロジャーの思想性はココにはない。ニック・メイソンの奇抜なアイディアもちょっと欠けているかな。でも『THE WALL』以前のフロイドが好きな人なら、思わず、うふふ、と微笑んでしまうサウンド。ロジャーなしのフロイドは結構続いたけれど、リック抜きのフロイドは音楽的な“らしさ”をなくし、すぐに失速した。

ギルモアは、かねてからフロイドの終息宣言を出していたけれど、おそらくリックの逝去でそれは完全に封印されるのだろう。

しっかし、今はこのアルバムでさえ、普通に手に入らないのね…