96274718.jpgいよいよデヴィッド・ロバーツの日本公演最終日@渋谷クラブ・クアトロ。サウンド・チェック中に会場入りすると、デヴィッドがすかさずカナザワを発見し、手を振ってくれる。大阪・名古屋には同行できなかったが、初日を見た自分や、元々カナザワとデヴィッドを結びつけてくれた友人T氏のアドヴァイスをすぐに反映させ、より熟れたショウになったきたようだ。うーん、何処までも真面目なデヴィッドである。当然バンドの演奏も尻上がりに良くなっており、この夜はベスト・パフォーマンスが期待された。

でも開演前は結構ナーヴァスになるデヴィッド。声をセーヴする必要もあり、サウンド・チェック後は非常に寡黙になってしまうのだが、サスガに最終日でゆとりが出てきたか、某ショップの販促用に積まれたCDの山にサインしたり、スタッフの依頼にも気軽に応じ、結構リラックスしている。
「Hey Toshi, 君はサインは要らないのか?」「来年また来るつもりなんでしょ? もう会えないと思った時に頼むよ」

今日はたくさんの友人たちに加え、日頃お世話になっている業界内のAORファン、そして片寄明人さんやAOR御用達イラストレイター:永井博さんなどの姿も。そしてステージはほぼ定刻にスタート。セット・リストは以下の通りである。ちなみに7と13は初日のみ入れ替わっていて、More Encoreは大阪と東京2日目のみだった。

1. All In The Name Of Love
2. Better Late Than Never
3. Someone Else's Song
4. Boys Of Autumn
5. Run Back
6. Midnight Rendezvous
7. Misunderstood
8. Be Gentle With My Heart
9. Before I Go
10. What I've Been Missing
11. Stay With Me Tonight
12. Someone Like You
Encore
13. Best Thing I Never Had
14. Until your Heart's Content
More Encore
15. All In The Name Of Love

やっぱり期待通り、初日の演奏とはかなりの差。ミスがほとんどなくなったし、ステージ進行の流れもスムースに進んでいく。デヴィッドの声も立ち上がりこそ若干不安定だったが、すぐに立ち直ったようだ。終演後バン・マスのフレッド・モーリンが「昨日までがリハーサルで、今日が初日みたいなモンだな」と宣っていたのも、よく分かる。

全体的なアレンジは、基本的にスタジオ盤に忠実。<Someone Else's Song>や<Be Gentle With My Heart>のようにたっぷりソロ・パートをフィーチャーした曲もあったが、完全主義者のデヴィッドだけあり、かっちりアレンジされたサウンドを好むようだ。そしてやはり『ALL DREESED UP』の曲のウケは抜群。とりわけ、<Boys Of Autumn>や<Midnight Rendezvous>でウルウルしていた人が多いみたい。やっぱりリアルタイム派は、このあたり、いろいろな思い出が楽曲とオーヴァーラップするんだよな。

メンバーでは、ギターのPat Bergesonが収穫。ポップ・カントリー系の人で、ケニー・ロジャースやマイケル・ジョンソン、アリソン・クラウゼ、スワンダイヴあたりと共演し、なかなかシャープで的確なソロを聴かせてくれる。ハープもなかなか良いのだが、実際にハープでレコーディングに呼ばれることも多いようだ。フィル・コリンズとの活動が長いブラッド・コールは、意外にも結構コーラスを歌っていて起用なトコロを聴かせる。彼はサウンド・チェック後もひとりで楽器を弾いていたり、3日の渋谷タワーでのインストア・イベントの時もひとりで店内をウロウロ歩き回るなど、音楽の虫みたい。ベースのローレンは、本来シンガー・ソングライターとしてソロ作も出しており、ボニー・レイットのフロント・アクトも務めたそうだ。ドラムのポールはオーストラリア出身。スティーヴ・ガッドやスティーヴ・ジョーダンが好きなんだ、と語っていた。そして何より、まとめ役のフレッド・モーリン。この陽気なオッサンが、まさにデヴィッドを精神的に支えているのがよく分かった。

終演後は近くのダイニング・バーで打ち上げ。いつもHOT SAKEをお銚子1本しか呑まないデヴィッドが、珍しく2本目にトライする。やっぱり安心したんだねぇ〜。たまたまライヴに来てた女性客も来ていたようで、「うわー。デイヴィッドがいるー。信じられな〜い」 そんな黄色い歓声にも笑顔で応えていた。83年当時は本格的ツアーなどやっていないらしいから、きっとデヴィッドにとって初めての経験だったのかも。女性AORファンの中では、結構アイドル視している人もいたらしいし…。

終電間際、これからもKeep in Touchで行こうと固く約束を交わして帰路に。一行は京都にムスコが住んでいるフレッドを残して、明日機上の人となる。ありがとう、デヴィッド。充実した今回のツアーは、きっと次回に繋がるはずだよ。