4ae2e84e.jpg日本を代表するベーシストにして、Jポップ・シーンの最前線を走った時期もある敏腕アレンジャーの後藤次利。その彼がソニー系列のフィッツビート・レーベルからリリースした3枚のアルバム、『BREATH』『INNER SUGGESTIONS』『CITY TRICKLES』を紙ジャケで再現し、ボックス化したのがコレ。出てすぐ買ったのを、2ヶ月経ってようやく開封した。ま、中身はアナログで持ってたりするモノで…

後藤次利といえば、セッション・プレイヤーながら縁の下の力持ちには止まらず、バリバリの個性派でいち早く売り出した人。BCリッチのイーグル・ベースでブイブイと攻撃的に弾くスタイルは、フリーのアンディ・フレイザーの影響だったか。アレンジャーとして斬新な感性を発揮し始めたのは、79年に手掛けた沢田研二の<トキオッ>から。アレは自分の周囲でもかなり話題になったっけ。ベースではミカ・バンド〜サディスティックスも然ることながら、古澤良次郎とのコンビで本多俊之のバックを務めた時のプレイが印象に残っている。

ベーシストにもいろいろなタイプがいるけれど、典型的なのは、後ろでデーンと構えてひたすらグルーヴを支えるタイプと、自ら前面にシャシャリ出てグルーヴを鼓舞するタイプ、それとリード楽器的にベースの可能性を拡げていくタイプ。でも彼の場合はどれにも当てはまらない。極論すれば、ココではたまたまベースを弾いているだけで、彼はもっと大きいスケールを以て“音楽家;後藤次利”を表現している。だからベースは単なる奏法に捕らわれず、感性の赴くまま、音が出る道具として機能している。アバンギャルドだし独創的なプレイだけれど、それを狙ったのではなく、あくまでも結果論に過ぎないのではないか。

ちまちま聴くのではなく、音像の中に身を沈め、全身で浴びるようにして聴きたい作品だ。