64051fd0.jpgザ・ボアノヴァ・ホテル。その名前にピーンときたら110番…じゃなくて、買いに走って損はないかも。そうお察しのように、これは<Maniac>で知られるマイケル・センベロのニュー・プロジェクト。しかもパートナーは、AORファンにはお馴染みのブルース・ガイチ&ジェイニー・クルーワー夫妻、プロデュースは故ミニー・リパートンのご主人だったリチャード・ルドルフなのだから、音だってご機嫌なのだ。

ただしその中身はAORメインストリームではなく、その手の曲をラテン・タッチの斬新なアレンジで聴かせるというカヴァー・ユニット。だからこそ、センベロのファースト・アルバムのタイトルをそのまま持って来たワケだ(彼のスタジオの名でもある)。

時にセンベロがこうしたワールド・ミュージック的指向を見せるのはお馴染みだけれど、ブルースもマドンナ<La Isla Bonita>の作者だけあって、こうしたソフト・ラテンはお得意。ジェイニーにいたってはフリオ・イグレシアスをサポートしていたり、最新ソロ作が『FALLEN FOR BRAZIL』というボサ・アルバムだったりする。しかも3人とも、裏方で才能を発揮するような真のサウンド・クリエイター。ディレクションがシッカリしてれば、それだけ優れた作品が生まれるのだ。

かくしてこのソフト・ラテンなカヴァー・ユニット。リメイクの対象は、いわゆるポップス・ヒットにメンバーとリチャード・ルドルフ絡みの曲を交えたもの。ざっと紹介すると…

1. It's All In The Game(クリフ・リチャード/フォー・トップス)
2. After The Love Is Gone (E.W.& F)
3. Maniac(センベロ)
4. A Day In The Life Of A Fool(ルイス・ボンファ)
5. Tainted Love(ソフト・セル)
6. Lovin' You (ミニー・リパートン)
7. Let's Groove(E.W.& F)
8. Feelin' Alright (トラフィック)
9. La Isla Bonita (マドンナ)
10. Inside My Love(ミニー・リパートン/リオン・ウェア)
11. What You Won't Do For Love (ボビー・コールドウェル)
12. That's The Way Of The World(E.W.& F)
13. Through A Child's Eyes (新曲)
14. Lovin' You (Bossa Nova Version)

…ってな具合。しかもただのラウンジーでサウダーヂなボサ・アレンジではなく、拍子を替えたりテンション・コードを加えるなど、豊かなアイディアと緻密なサウンドに埋め尽くされた一枚なのだ。

ついでに言っちゃうと、実はもう半数以上の曲は既発表だったりする。カフェ・チェーンのPRONTOが去年出したコンピCD 『STARTING OF LOVE』と『LOVE IN THE TWIGHT』がそれ。このあとメンバーのひとりから人づてに「日本でのリリース先を探してくれ〜」と頼まれ、いち早く全体の音を聴かせて貰ったが、さすが歴戦の強者たち4人が関わるユニット、こちらが動き始めて間もなく自力でディールを獲得した。

ま、耳の肥えたAORファンは「チッ、よくありがちなフェイク・ボサものかよ」と思うだろう。が、ちょいと斜に構えてるとイタイ目に遭いそうなくらいクリエイター気質丸出しの、でも聴き流しても心地良い、そんなセンスの良い一枚になっている。リリースは今月27日。


JANEY: Fallen For BrazilBRUCE GAITSCH: Aphasia