28fce45c.jpgイーグルスやジャクソン・ブラウン、J.D.サウザーやネッド・ドヒニーを世に送り出し、ジョニ・ミッチェルやリンダ・ロンシュタットも在籍、一時期はボブ・ディランまでリリースしたアサイラム・レーベル。我々が“ウエストコースト・サウンド”と聞いて、すぐにアコースティックなシンガー・ソングライター・スタイルを思い浮かべるのは、こうしたアサイラム系のアーティストたちの活躍に拠る部分が大きい。

そのアサイラム初の黒人アーティストとして紹介されたのが、今回初CD 化されたスティーヴ・ファーガソンだ。デビュー盤にしてワン&オンリーとなったこのアルバムは、73年のリリース(近年自主盤を出しているらしい)。かつてはライ・クーダーのツアーでピアニストを勤めた時期もあるそうだが、その後L.A.でシンガー・ソングライターとして歌い始め、ジャクソン・ブラウンの紹介でアサイラム入りした。

黒人男性でシンガー・ソングライター色が強い人というと、真っ先にビル・ウィザースが思い出されるところ。だがこの人のスタイルは、ビルの全盛期のようにフォーキーではなく、もう少しジャジーで洒脱。曲によってはランディ・ニューマンのような風情もある。自分でマンドリンを弾くなど凡そソウル的ではなく、もっと広範な音楽を昇華している感じ。スリーヴには“ビリー・ホリデイとショパン、日本食と西部劇が好き”というコメントもある。

自分でギターとピアノを弾き、主なバックにはウィルトン・フェルダー(b)、エド・グリーン(ds)、ボビー・ホール(perc)の3人。1曲だけデヴィッド・T・ウォーカー(g)がギターを弾いている。ヴォーカルは、いわゆるソングライターズ・ヴォイスというか、要するにヘタウマ。インテリっぽさはあるが、この辺りも黒人アーティストとしては異色だろう。80年代後半からは、セレブなレストランの専属ピアノマンをやっているそうだ。