nelson90年に出たネルソンのデビュー・アルバム『AFTER THE RAIN』は、当時かなり聴きまくった。特に全米首位となった<Love And Affection>の素直なアメリカン・ハード・スタイルが大好きで。ボストンがもう一歩メロディック・ロック化したと言うか、ボン・ジョヴィに少しだけインテリジェンスと加えたと言うか…。ま、実際に国民的人気を誇ったカントリー・シンガー:故リッキー・ネルソンのツインズなので、見事なサラブレッドでもあるわけだが。

しかし第2作を巡って所属レーベルと衝突。好機を逸した彼らは再浮上叶わず、この10年間はアルバム制作からも遠ざかっていた。それでも活動情報は断片的に入っていて、09年あたりから本格復活のノロシが上がっていた。そしてこのカムバック作の登場である。

ただ個人的には、イタリアのFrontierと契約したと聞いていたので、一抹の不安があった。とにかくアソコは欧州好みのメロディック・ロックが主流で、結構メタリックな音へ行きがちなのである。でもネルソンの身上は、万人受けしやすいキャッチーなメロディと爽やかなヴォーカル・ハーモニー。そしてハード・ポップな中にもアコースティック楽器を効果的に散りばめ、広がりを持たせるところにある。Frontier系のヘヴィに畳み掛けるヨーロッパ仕様のメロディック・スタイルでは、本来のネルソンらしさが失われかねないのだ。

でもそこは、ツインズが丹精込めて完成させた復活作。ハッキリ入って、デビュー・アルバム以来となる起死回生の一作といえる。楽曲に拠ってはボストン以上にボストンっぽい音が鳴り出して、思わず苦笑させられたりするが、スカッ と明快に聴き流せること請け合い。コレこそ“彼らの生きる道”なのだ。我を通して辛酸を舐めた彼らだったけれど、苦難の20年を経てきた甲斐は充分にある。以前から時々書いてきたが、“演りたいこと” と “演るべきこと”とは必ずしもイコールではない。好きなコトだけやってれば良いという時代は、もう遠い過去の話なのだ。

あ、1曲スティーヴ・ルカサーがゲスト参加してます。