mike_porcaro何とビックリ、病気療養中で音楽活動を休止しているTOTOのベース・プレイヤー、マイク・ポーカロの初ソロ作が突然登場した。でも中身を知って納得。これは俗に言うソロ・アルバムではなく、02年にドイツで開催されて大きな盛り上がりを見せたイベント“トリビュート・トゥ・ジェフ(ポーカロ)”のライヴ盤。“ポーカロ・ファミリー初のリーダー作”という国内盤のキャッチ・コピーは、些か誇張し過ぎの嫌いアリ、である。

元々この“トリビュート・トゥ・ジェフ”の主宰者は、当初ジェフも参加していたカリズマのKyd奏者デヴィッド・ガーフィールドである。多くの仲間たちを集めて97年に同名アルバムを世に送り出した彼は、そのライヴを世界各地で積極的に展開してきた。その中のひとつが、このドイツ公演だった。

だがそれがスペシャルだったのは、いつものようにガーフィールド自身が仕切るのではなく、ジェフの弟マイク・ポーカロをバンド・リーダーに招いたから。更にジェフやマイクの父親ジョー、TOTOのオリジナル・メンバーでもあった末弟スティーヴ(kyd)、3兄弟の甥っ子チェイス・ダディも参加し、まさに“トリビュート・トゥ・ジェフ”と言うに相応しいファミリー総出のイベントになった。加えて、ドイツで開催されるドラム・フェスティバルに公演日程を合わせたことで、ジェフを敬愛する著名ドラマーが多数駆けつけ、かのスティーヴ・ガッドを中心に、グレッグ・ビソネット、ジョン・ロビンソン、バーナード・パーディらが演奏に加わった。ヴォーカルにはボビー・キンボールの他、アレックス・リジャートウッド(ブライアン・オーガー〜サンタナ)にグレン・ヒューズ(ex-ディープ・パープル)。バンドには、ギターに職人マイケル・オニール、パーカッションにレニー・カストロ、サックスにラリー・クライマスという布陣。すなわち、TOTOとガーフィールド人脈が入り乱れた形となっている。その流れではグレン・ヒューズが??な存在だが、何でもリジャートウッドと仲が良いとか。

収録されたのも、TOTOの名曲<Rosanna>や<Georgy Porgy>、<Africa>等に、カリズマやロス・ロボトミーズ系のレパートリー、ボズ・スキャッグス<Lowdown>やスティーリー・ダン<Babylon Sisters>といったナンバーをミックスし、ほとんどすべてがジェフ所縁のマテリアルで占められた。スティーヴ・ポーカロもいることから、彼がマイケル・ジャクソンに書いた<Human Nature>をミュート・トランペットをフィーチャーしたマイルス(デイヴィス)のアレンジでプレイ。またセロニアス・モンクの<Straight NO Chaser>では、父ジョーが渋〜いドラム・ソロを披露。反対に<English Eyes>では、チェイス・ダディが若々しいドラミングで将来性豊かなところを聴かせる。

ちょっと意外だったのは、スケジュールの都合なのか、サイモン・フィリップスが不参加だったこと。しかしTOTOの楽曲を叩くガッドのプレイを聴いていると、<Rosanna>, <Georgy Porgy>, <Africa> あたりのロイクなノリは、サイモンよりもガッドの方がフィットしている。ジェフの十八番であるハイハットのハーフ・タイムを刻まず、スネアのゴーストノートでグルーヴを作り出していくところに、ガッドからジェフへのリスペクトが込められているような気がした。ちなみにマイクとガッドが一緒にリズム隊を組むのは、この時が初めてとか。やや緊張気味だったとされるマイクも、ガッドの存在を意識してか、TOTOよりもしなやかで柔軟なプレイを心掛けているようだ。

TOTOが難病ALSで闘病中のマイクのために再集結し、この5月には日本でもベネフィット・ツアーを行なうが、本作はたまたまこのタイミングになっただけで、チャリティの意味合いはないらしい。ならば余計にマイクのソロ作としてではなく、彼のプロジェクト・リーダーとしての立場を明確にしておくべきではなかったか。マイク自身がコメントを寄せているように、パフォーマンスは十分にリリースする価値があるもの。ならばその在り方を拡大解釈し、必要以上に感情へ訴えかけるような冠を掲げるべきではないだろう。魂の入った演奏が楽しめる素晴らしいライヴ・イベントの記録なのだから、余計な演出は返ってマイナスなだけである。