mike+mechanics_011フィル・コリンズの引退で宙に浮いてしまった形のジェネシス。残された2人がジェネシスをどうするのかは不明だが、トニー・バンクスがまずサントラを作ったのに対し、マイク・ラザフォードはやっぱりマイク+ザ・メカニクスを再生させた。これはその新生メカニクスの第1弾となる。

アルバムとしては、04年作『REWIRED』以来、約7年ぶり。しかしそこには盟友ポール・キャラックの名はなく、代わりに参加したのは、ヒット曲もあるUKブラックのシンガー・ソングライター:ローチフォードと、英国で活躍するカナダ人シンガー/俳優のティム・ハウアー。この2人をフロントに据えてバンド体制を整え、ライヴ活動も行なっているらしい。キャラック不在と知って、あらら…と思う方は少なくないと思うが、後任ローチフォードに意表を突かれる方も多いんじゃないだろうか。

そもそもその『REWIRED』は、デビュー以来の2枚看板であるポール・ヤング(元サッド・カフェ)の逝去を受け、マイクとポール・キャラックでバンドを維持していく意志を示したもの、と受け取っていた。名義も“マイク+ザ・メカニクス+ポール・キャラック”となっていたので、これからはキャラックを大フィーチャーしていくのだな、と解釈したわけである。しかし今にしてみると、あの時メカニクスは既に終わっていたのだ。だがヤングの遺志を継ぐべく、キャラックを呼び戻してアルバムを完成させた。“+ポール・キャラック”の意味は、彼のメカニクス離脱を意味していたのである。だから本作でのニュー・ラインナップは、言わば既定路線なのだ。

かくして生まれた『THE ROAD』。最初はダブル・ポールの声が無いことに侘びしさを感じてしまったが、アルバムの出来は決して悪くない。むしろ、ちょっと煮詰まり気味だったココ何作かに比べれば、ちょっとシェイプ・アップ&若返りした感があって、大人のためのブリティッシュ・ポップ・ロックとしてよくできている。プロデュースも共に彼らのヒット曲を産み出してきた、お馴染みクリストファー・ニール。だから安心。子供たちのコーラスを配した<Heaven Doesn't Care>には、何処かしらU2の香りが漂う。派手なキラー・チューンが見当たらないので、前述曲あたりがどれだけオンエアを稼げるかがポイントになるだろうが、2人のシンガーの持ち味がもう少し前へ出て来ると、もっと面白くなるはずだ。ポール・ヤングの遺作も出たようだし、ソロに専念するらしいキャラックも力作続きだし、カナザワもこの辺はずっと応援しますよ。

…とはいえ、マイクにはジェネシスの灯火も絶やさないで欲しいところ。いっそのこと、あちらにはスティーヴ・ハケットに復帰してもらって、ヴォーカルにはジェネシスに相応しいキャリアを持つ中堅シンガー、例えばフィッシュ(元マリリオン)とかを加入させる…、なんてどう???