wilbert_longmireこれは個人的に、待ちに待った初CD化。ジョージ・ベンソン・タイプの黒人ギタリスト、ウィルバート・ロングマイアーが、ボブ・ジェイムスのレーベルであるタッパン・ジーから出した2作と3作目が、ようやく銀盤化されたのだ。

フュージョン・ファンには、おそらくタッパン・ジーからのファースト『SUNNY SIDE UP』(78年)で知られているはず。そう、あの目玉焼きジャケでお馴染みの人だ。あのアルバムは90年代後半にCD化され、02年には一連のボブ・ジェイムス作品と一緒に紙ジャケ仕様で日本発売もされた。しかしそれ以降は再発もなければ新作も出ず…といった状況で、ほとんど忘れられた存在になっていた。

そもそもウィルバートは、モータウン・レビューを足掛かりにギタリスト・デビューしたそうで、その後ジャック・マクダフやジミー・スミスといったオルガン・ジャズの巨匠たちと共演。68年に、ジョー・サンプルがサウンド・プロデュースした初リーダー作『REVOLUTION』を出している。そのあとジャン・リュック・ポンティと繋がりを持ったらしいが、これは実を結ばず、ボブ・ジェイムスに出会って彼のレーベルに迎えられるまで不遇の時を過ごした。ボブとウィルバートを引き合わせたのは、何を隠そう、ジョージ・ベンソンその人。『BREEZIN'』や『IN FLIGHT』の大成功で波に乗ったベンソンだったが、自分によく似たスタイルを持つ後輩ギタリストの存在を知り、何かと世話を焼いていたようである。

音楽的にも、急速にポップ化を歩み始めたベンソンの後釜に収まり、CTI〜ワーナー移籍直後のベンソン・スタイル、すなわちウェス・モンゴメリーから脈々と流れるイージー・リスニング・ジャズ路線を継承。オーケストラをゴージャスに使いこなした、ジャズとソウルのクロスポイントに再度スポットを当ててみせた。ベンソンほど達者ではないが、朴訥な歌を披露するヴォーカル・チューンにも味がある。

2枚のアルバムに参加したミュージシャンも、ボブを中心としたタッパン・ジー・ファミリー。レーベル・メイトだったリチャード・ティー(kyd)を筆頭に、エリック・ゲイル(g)、スティーヴ・カーン(g)、ハーヴィー・メイソン(ds)、アイドリス・ムハマッド(ds)、バディ・ウィリアムス(ds)、ブレッカー・ブラザーズ(horns)…といったニューヨークの著名セッションメンがこぞって顔を出し、ウィルバートのハートフルなギター・ワークを、時にはファンキーに、時にはメロウにサポートしている。

個人的に愛着があるのは、アナログの輸入盤で聴き倒した80年作『WITH ALL MY LOVE』。ウィルバート自身はあまり曲を書かないが、持ち寄った楽曲がとても良くて…。とりわけ、当時ボブの右腕的存在でもあったアレンジャーのジェイ・チャタウェイが深く関わった<Hawkeye>や<Crustal Clear>といった楽曲が秀逸だ。