emotions_rejoyceブラック・ミュージック系の某音専誌に、お初の原稿を執筆中。アドリブ誌が休刊になってからというもの、レギュラー的に書いているのが一誌だけになってしまったので、新しい関係が産まれるのはとても嬉しい。でもそれ以前に、この夏休み進行では執筆依頼が集中し過ぎて、スケジュールに拠っては折角のお話をお断りせざるを得ないケースが出ているのが心苦しい。アルバイトで喰い繋いでる音楽ライターさんも少なくないというこのご時世、本当にありがたい限りだ。

さて、いま書いているのは、デビュー40周年を迎えてやおら盛り上がってきているアース・ウインド&ファイアー関連の記事。テーマは“グルーヴ・マスター”と謳われたサウスポーのギタリスト、アル・マッケイである。それなりのキャリアを持ってアースに迎えられた彼は、全盛期のアースで総裁モーリス・ホワイトの右腕となって働いたわけだが、ソングライターとしての貢献は意外に少ない。すぐ思い浮かぶのは<September>や<Sing A Song>くらいで、むしろ忘れられないのはコチラ、エモーションズの<Best Of My Love>である。

この<Best Of My Love>は、スウェイ・ビートを使った有名なダンス・クラシック。エモーションズの代表曲であり、モーリス・ホワイト/カリンバ・プロダクションによるアース以外の制作物としても一番成功した。だがアルバムを通して聴くと、エモーションズの多彩な面がバランス良く表現されており、さすがにモーリスが目を付けた実力派だと認識を新たにさせられる。アース子飼いのヴォーカル・グループと思われがちだけれど、実際のところ、彼女たちはゴスペルでのキャリアがあり、その前からスタックスでアルバムを出していたのだな。その辺りをシッカリ抑えているのは、ウルサ方のソウル・ファンくらい。でもこのアルバムでも、そうしたサザン・フィーリングは時々顔を出していて。例えばボビー・コールドウェルやジェイドでも知られるスキップ・スカボロウ作の名バラード<Don't Ask My Neighbors>では、妙にマリーナ・ショウっぽいフェイクが聴けたりする。けれどその一方で<Key To My Heart>のように、美しく洗練されたハーモニーを披露したりも。ココで聴けるモーリスのヴォーカルは、アースとは別人28号。充分耳に馴染んだ声なのに、クレジットを見なきゃ誰だか分からない。

本作では、アースの外からkyd奏者クラレンス・マクドナルドがモーリスのコ・プロデューサーに招かれたが、当然アル・マッケイの貢献度も小さくないと思われ…。しかし、「これは!」と思ってクレジットを確認すると、どうもマルロ・ヘンダーソンがギターを弾いてるっぽい楽曲だったりして、そこが何とも。アース本体が『ALL 'N ALL』を出したばかりの頃に、エモーションズでは既に『I AM』のようなコトをやっている。そうした意味では、ちょっとパイロット的な意味合いもあったのか。ジェイムス・ギャドソンやモーリス自身のドラムも、時々耳を奪われるほどジェフ・ポーカロっぽい。もっともジェフはギャドソンを師のひとりとして崇めていたから、似ているのは当然なのだが。でもこうした辺りが、デヴィッド・フォスターを筆頭とする外部ミュージシャンの起用を推進していくモーリスと、メンバー軽視を憂えるアルの衝突に繋がり、『FACES』でのアル脱退に発展していったと思われる。

AORファンが喝采を浴びせた<Back On The Road>のスティーヴ・ルカサー起用が、アルにアース脱退を決心させたというのは何とも皮肉だ。