ramsey_mockingbirdただいま執筆中の原稿は、来月8タイトルが紙ジャケ/Blu-spec化されるラムゼイ・ルイス。3枚書かせていただくことになっているが、まずはアース・ウインド&ファイアー絡みで、ラリー・ダンとバート・デ・コトー制作の77年作、米Columbiaでの9作目に当たる『TEQUILA MOCKINGBIRD』に着手している。

アース・ファミリーとのコラボレイトは、お馴染み『SUN GODDES(太陽の女神)』、そしてペイント顔も印象的な『SALONGO』に続くもの。ラリー制作曲は3曲のみだけれど、アース全盛期真っ只中なので、これがどうにもアース色濃厚。とりわけタイトル曲は、リズム隊が繰り出す強靭なグルーヴに乗って、分厚いホーンやストリングス、シンセサイザー、そしてパーカッションの乱れ打ちが飛び交うゴージャスなナンバー。ほのかなラテン乗りは、カルデラのエディ・デル・バリオの持ち込みか。ソプラノ・サックスのソロはロニー・ロウズ。個人的にはディー・ディー・ブリッジウォーターのヴォーカル・ヴァージョンにホの字だけれど(『BAD FOR ME』所収)、ラムゼイのオリジナルもなかなか美味だ。

 ヴィクター・フェルドマンの提供曲<Skippin'>と、ラストの<That Ole Bach Magic>もラリー・ダン制作。そう、前者はAOR系のファンにはリズム・ヘリテッジで知られる、あのファニーなナンバー。後者はバッハをモチーフにした、アースの頭脳派であるラリーらしい曲だ。

それ以外の5曲が、バート・デ・コトーが手掛けたラムゼイのレギュラー・バンドの楽曲。でも今回、「こんなに良かったか」と耳を疑ったのが、実はコチラの方なのだ。先の3曲はどうしてもアースのイメージで聴いてしまい、ちょっと抑えた作りに、「まぁ、メインはラムゼイだから…」と納得するわけだが、こちらはハナからラムゼイのピアノをひたすら魅力的に響かせることに全精力を傾けているワケ。だから演奏にしてもアレンジにしても、シンプルで無駄がない。それぞれのトラックにゆったりとした空間があるから、生ピアノのアタックの余韻やローズのフェイザーの揺らぎ感をジックリ堪能できるわけだ。

ラムゼイもそれを分かっているのか、アース一派とは付かず離れずの関係をキープしている。そうしたバランスの取り方の巧みさが、彼の長〜いキャリアを支えたのは間違いない。