crimson_bibleblackクリムゾンの40周年シリーズの最新盤、『暗黒の世界(STARLESS AND BIBLE BLACK)』と『ディシプリン(DISCIPLINE)』が本日到着。早速仕事をうっちゃり、DVDオーディオのサラウンドで、爆音の『暗黒の世界』に浸る。

唐突にスタートする<The Great Deceiver>から、まさしく圧巻のクリムゾン・ワールド。狂ったようなフリップ翁のギターが、四方八方から降り注いでくる感じがタマラない。荘厳な序盤から徐々に激しさを増していく<Lament>も、また然り。ビル・ブラッフォードのパーカッションが前後左右から攻め掛かり、ジョン・ウェットンのアグレッシヴなベースが中央突破を計る。

ミックスは例によってポーキュパイン・ツリーのスティーヴ・ウィルソンとフリップ翁。今まで世に出たサラウンド・ミックスのほとんどは、普通の2chステレオをベースに5.1ch化し、構成音のごく一部をリアに振った印象だったが、クリムゾン作品に於けるスティーヴ・ウィルソンの仕事は、もっと画期的だ。一度まったくのゼロ・ベースに立ち返ったところから、すべての出音を5方向に割り当て、その上でオリジナルのステレオ・ミックスとの整合感を出している感じがするのである。

だから元々のステレオ・ヴァージョンに慣らされた耳には、思わぬ方向から聴き慣れたフレーズが飛び込んで来るワケで、殊更にインパクトが強い。特にパーカッションは、まさに飛び道具状態 物陰から刺客が切り掛かってくるかのように、グッサリと差し込まれるのだ こりゃあ〜、最後の最後まで出し惜しみされてる『太陽と戦慄』への期待感が高まるばかり。何と言っても、あのアルバムには、ブラッフォードに多大な影響を与えた前衛パーカッション奏者ジェイミー・ミューアがいたのだからして…。

とはいえ、この『暗黒の世界』も、決して侮れず。確かに、名盤『太陽と戦慄』と最初のラスト・アルバム『レッド』(変な表現)の間に置かれ、ちょっと影に隠れがちな存在ではある。しかしこのアルバムが、当時のライヴ録音を元に編集とダビングを重ねて創り上げられたことは、今ではよく知られるところ。<Fracture(突破口)>なしでは、あの『レッド』も生まれなかったと思う。過渡的ではあっても、激しさと叙情性が一体化していた『レッド』までのクリムゾンに、不必要なアルバムは一枚もない。

それにしても、ウェットン&ブラッフォードのリズム隊がこんなにもファンキーだったのか、と改めてビックリ。73年のニューヨーク、セントラル・パーク公演のライヴ映像が2曲収録されているけれど、ウェットンなんて今にもスラップ始めそうだよ…

このところ、ピンク・フロイド祭りに気を奪われがちだったが、聴き直しの衝撃度はクリムゾンの方がはるかに上だな。