lodgicやっぱり音盤好きは、定期的にCDショップを覗かないとダメですねェ。こんな大ネタ(個人的に、ですが)が暮れのうちに出ていたとは、まったく知らなんだ。実は一昨日の角松取材のあと、打ち合わせを兼ねて同行諸氏3人で有名な焼き鳥屋へ。明るいうちから杯を重ねて解散したが、普通はこれから飲むよな〜、という時間だったので、「真っすぐ帰るのもったいないなー」と、ひとりホロ酔い加減で新宿下車。気がついたら、CDショップにいた。そしていきなりコレを発見  ボーッとした頭で、「もしかして誘われてたのね」と ほくそ笑んだりして

レコード・コレクターズ誌のTOTO特集(11年7月号)でも、デヴィッド・ペイチとスティーヴ・ポーカロのプロデュース作ということで取り上げた、ロジック唯一のアルバム。発表は85年で、まさにその時代ならではのソリッドなサウンドが特徴になっている。狙いはズバリ、Mr.ミスターと"90125"イエス。そこにポリスやジェネシス、スーパートランプ、TOTO風のアレンジを絡めた、シャープなポップ・プログレ的サウンドを狙っているのだ。しかもTOTOの面々が見い出した新人バンドだけあって、演奏スキルもハイ・レベル。それが今回のデジタル・マスタリングで、より一層、ド迫力の音像で迫ってくる。

ブックレットにはメンバーのインタビューも掲載されており、当初はペイチとデヴィッド・フォスターが共同プロデュースする予定だったとか。それがスケジュールの都合でペイチとスティーヴ・ポーカロ、ジェイムス・ニュートン・ハワードに代わり、最終的にはニュートン・ハワードが離れて、エンジニアのトム・ノックスが名を連ねた。ペイチは早くから彼らを積極的にサポート、A&Mとの契約にも手を貸してくれたという。

こうして完成したアルバムは、とてもデビュー作とは思えぬ充実度。イエス『90125』やMr.ミスター『WELCOME TO REAL WORLD』に比べても、そう引けは取らないだろう。シングル・ヒットを狙えそうな曲が、モロに<ロンリー・ハート>している<Bringing Me Back>だけ、というのがちと痛いが、どの曲も畳み掛けるようなアレンジが秀逸で、ひとときも飽きさせない。キラー・チューンは1曲だけでも、セカンド・カットに選べそうなマテリアルはズラリ揃っている。音的に面白いのは、制作陣からも分かるようにキーボード・サウンドの多彩さなのだが、それをガッチリ支えているのが、ビリー・シャーウッドのベース。固い音でベンベン響く重低音は、ほとんどイエスのクリス・スクワイアーだ。

それでもレーベルからのサポートが不十分だったのか、ロジックは2年ほどで解散。しかしながら、ビリー&マイケルのシャーウッド兄弟とKydのガイ・アリソン、ギターのジミー・ハーンは、ジョセフ・ウィリアムスの兄マーク・T・ウィリアムス(ds)と共に、何とエア・サプライのバック・バンドとなり、後々まで活躍を続ける。そのうちシャーウッド兄弟とガイ、マーク・Tは、マクサスのオリジナル・ギタリスト:ブルース・ゴウディと手を組んでワールド・トレイドを結成。更にこれがガイとゴウディのアンルーリー・チャイルドに発展し、この辺の面々がボビー・キンボールの初ソロ作『RISE UP』(94年)で活躍する。このアンルーリー・チャイルドは2年前に再結成されたが、ガイは併行してドゥービー・ブラザーズと行動を共にしており、現在もアメリカ・ツアー中のはずである。一方シャーウッド兄弟は、クリス・スクワイアに接近。彼のソロ・プロジェクト経由でイエスのサポートにつき、特にビリーは一時は正式メンバーにも迎えられた。その後もマーティ・ウォルシュ(g)とのプロジェクト:The Keyでもアルバムを出したし、キンボール、イエスのトニー・ケイ(kyd)と組んだYOSOも記憶に新しいところ。そういえば、去年ケイと2人で来日もしていたな。

こうした解散後の動向を見れば、如何にロジックが可能性を秘めた実力派バンドだったかが分かる。実際、彼らよりも遥かに劣るバンドがガンガン売れていたりするワケだから、結局彼らには “運” がなかったということなのだろう。イエス方面やメロディック・ロック・ファンの間では知られているロジックだけれど、本来もっと多方面から再評価すべきバンドなのだ。