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95年のJT Super Producers以来となるナラダ・マイケル・ウォルデンのステージ@Blue Note Tokyo。ナラダ個人では前回のジェフ・ベックのバンドで来日していたけれど、ドラムがナラダだと知った時には既にチケットは入手困難で…。しかし今回はソロ名義での初めてのクラブ・ギグ、オマケにかつてプロデュースを務め、横浜球場で共演ライヴも行なった高中正義がゲスト参加する。ナラダの旧作リイシューを監修したことのある身としては、絶対見逃すワケにはいかない。


階段を下りて席に着くと、ステージ中央に大口径のツイン・バスを組み込んだナラダのどデカいドラム・セットが。しかも花を飾り付けてあるあたりが、ラヴ&ピースが身上の彼らしい。とはいえ今回は豪華絢爛なJTのステージとは違い、フランク・マーティン(kyd)、若手のマシュー・チャールズ・ヒューリット(g)、そして見た目も麗しい女性ベーシスト:エンジェリン・サリという、ややロック寄りのカルテットがベーシックなフォーマット。セカンド・ドラマーなんて不在だから、ナラダ自身がドラムを叩きながらヴォーカルを取り、ナラダがプロデュースした女性シンガーの有名曲は、ニキータ・ジャーメインのヴォーカルで披露する。JTの時にも来ていたニキータは、93年にナラダのプロデュースでモータウンからアルバムを出していたシンガーだ。

客電が落ちると、ナラダは羽根のついたインアディアン風の被り物でステージに。そのままエナジー全開でドラムを打ち鳴らし、イントロダクション的新曲をカマすと、そのまま壮大なインスト曲<Dance of Life>へ。更にニキータ嬢が登場し、ナラダのソロ・デビュー作から<Garden Of Love Light>を矢継ぎ早にプレイしていく。

ナラダというと、自身のリーダー作からのダンス・ヒットと共に、アレサ・フランクリンやホイットニー・ヒューストン、マライア・キャリー、シャニース、そしてスターシップやクラレンス・クレモンズと、ブラック系や西海岸系のコンテンポラリー・ヒットのイメージが強い。もちろんマハヴィシュヌ・オーケストラやウェザー・リポートといったジャズ・ドラマーとしてのキャリアが先にあるが、 今回は久々にジェフ・ベックとツアーして感化されたか、ジャズ・ロック色が濃くなった。ベースが女性なのもそうだし、高中をゲストに呼んだのも、単なるファン・サーヴィスとは思えない。そこにアレサの<Freeway of Love>やホイットニー絡みの<I'm Every Woman>、<One Moment In Time>を追加し…というのが、今回のステージの流れだったと思う。しかし、ホイットニートとの仕事でソウル五輪用に書かれた<One Moment In Time>を持ってくるとは、ちょっと意表を突かれた感じ…

後半、高中がステージに上がってからは、完全に高中をフューチャー。<ReadyTo Fly>まで飛び出したのは意外だったが、その辺も屈託なく演ってしまうところがナラダの人柄だろう。アレンジはギターの掛け合いから鍵盤ソロ、オリジナル仕様のギター・ソロ、そしてドラム・ソロを交える、昔の共演時のスタイル。そして<黒船>は、ナラダがお気に入りだった。高中は客席に乱入し、客が飲み干したあとのグラスでスライドを披露したりして、相変わらずサーヴィス精神旺盛。オーディエンスも否応無しに盛り上がった。彼自身も30年を経ての共演を多いに楽しんでいたようである。

それにしてもナラダは、あれだけスキルフルで重量感のあるドラムを叩きながら、歌を唄いながらでもパワーはまったく落ちることなく、最後までドコスカドコスカ叩きまくる。武道館では遠目にしか感じられなかった超人ドラマーぶりを、クラブ・ギグで間近に感じられたのは収穫だった。そして最後は、メンバーが手を繋ぎ、オーディエンスに向かって<Sending Love To Everyone>をハモリながらのご挨拶。高中とは、“また一緒に演りたいね”と話したそうで、意外と近く実現するかも…なんていう予感がしている。

セット・リストは以下の通り。

1. THUNDER(新曲)
2. THE DANCE OF LIFE
3. GARDEN OF LOVE LIGHT
4. SHAKE THE HOUSE(新曲)
5. FREEWAY OF LOVE
6. 40 DAYS(新曲)
7. ANGELINE'S BASS SOLO
8. NEW YORK CITY(新曲)
9. WE BELONG TOGETHER(新曲)
10. MEDLEY : I Don't Want Nobody Else (To Dance With You) 〜 SEXY DANCER 〜 I SHOULDA LOVED YA
11. I'M EVERY WOMAN
12. SAUDADE (feat.高中正義)
13. READY TO FLY (feat.高中正義)
14. MANIFESTATION (feat.高中正義)
15. 黒船 (feat.高中正義)
 - Encour -
16. GET UP!
17. HIGHER GROUND
18. ONE MOMENT IN TIME

終演後は、まだ一般発売されていない最新作2作の即売とサイン会。基本的にあまりサインを集めたりしないカナザワだが、新作が逸早く買えるということで、迷わず行列に。ナラダに、「あなたのアルバムのライナーノーツを書いたことがあるんですよ」と伝えると、たいそう喜び、是非読ませて欲しいとご所望。ネームカードを渡して来た。日本のクラブ・ギグもお気に召したようで、「来年もまた来る」なんていうセリフも。それこそ名立たる大物を手掛けてきたスーパー・プロデューサーとは思えぬほど、実にフレンドリーなナラダであった。

Blue Noteで即売していた新作2作は、ナラダのオフィシャル・サイトで購入可能。どちらも来日メンバーと制作したモノで、『THUNDER』は歌モノ中心。従来のR&B色は控え目で、ややコンテンポラリー・ロック風味になっている。『RISING SUN』はインスト4曲のミニ・アルバム仕様で、<Dance Of Life>のニュー・ヴァージョンや、ジェフ・バックの<Sofie>をカヴァー入り。