ars_live何度も発売延期を繰り返していたアトランタ・リズム・セクションのライヴ・アルバム(79年)が、英BGOからようやっと世界初CD化。アナログ盤では2枚組大作の印象だったが、CDではスッキリ1枚にまとまって聴きやすくなった。

アトランタ・リズム・セクション(以下ARS)は、その名の通り、ジョージア州アトランタ周辺を拠点にしていたセッション・ミュージシャン集団。言わば “アトランタのTOTO”である。中心人物はギターのJ.R.コッブと、プロデューサーであるバディ・ビューイ。ソウルフルなソフト・ロック・グループ:クラシックスIVで作曲チームを組んでいたこの2人が、同じくビューイが手掛けるキャンディマン(元々はロイ・オービソンのバック・バンド)のメンバーや、地元のローカル・ミュージシャンを誘ってスタートし、72年にデビューした。

そのサウンドは如何にも南部産らしく、ゆったり大らかでポップなサザン・ロックが身上。オールマンのようにブルージーではないし、レーナード・スキナードのように豪快なブギーを聴かせるでもない。ましてやチャーリー・ダニエルズ・バンドみたいなカントリー・テイストもない。そのクセ、妙に哀愁味があって、洗練されたメロウな質感を持っていた。代表曲<Imaginary Lover>や<So Into You>(共に全米7位)は、まさにそんな感じのAOR指数が高いナンバーである。

名画『風の共に去りぬ』の<タラのテーマ>に乗ってメンバーが登場し、たっぷりと80分近く。まさに全盛期のARSサウンドが、このライヴ盤にたっぷり濃縮されている。ステージでの武器は、男臭いヴォーカルを聴かせる2代目シンガーのロニー・ハモンドと、ロバート・ベイリーのドライヴするリード・ギター。“秘密兵器”と呼ばれたベースのポール・ゴッダードの超絶ソロも、当時は彼らのステージの大きな売りになっていた。でもこの人、巻き毛のロン毛に黒ぶちメガネ、三段腹というルックスで、見てくれも“秘密兵器”だったんですけど…