5th_ave_southサディスティック・ミカ・バンドで日本のロック黎明に貢献したベース・プレイヤー、小原礼。細野晴臣や松任谷正隆と共にティン・パン・アレーで名を馳せたドラマー、林立夫。そんな大物職人ミュージシャン2人が、フィフス・アヴェニュー・サウスというツー・メン・ユニットを始動させた。これはそのファースト・アルバム。そしてカナザワは正月返上で、その某音専誌向けの紹介文を書いている。

作品の内容は、60〜80年代の洋楽著名曲のカヴァー集。目指すのは、ブッカーT.&ザ・MGズやミーターズのような、グルーヴィーなインストゥルメンタル・サウンドだ。でもそれが単なるイージー・リスニングにならず、小原=林コンビならではの、シンプルながらも深く表現力に富んだグルーヴによって雄弁に奏でられる。

とはいえこの2人、中学〜高校の同級生で、昔は一緒にバンドを組んでいた。にも関わらず、プロになってからは極端に共演の機会が少なくなったらしい。メール取材の際に、記憶に残っているセッションを上げてもらったら、ブレッド&バターくらいしか名前が上がって来なかった。

今回のバックを務めたのは、チャー、鈴木茂、土屋昌巳という個性派ギタリスト3人に、佐藤準(kyd)とハーモニカの八木のぶお。反対に取り上げたのは、ビートルズやビーチ・ボーイズ、バート・バカラック、テンプテーションズ、ラベル、ビー・ジーズ、ホール&オールからイーグルス、果てはカルチャー・クラブまで、と幅広い。でもどれも違和感などなく、彼らが醸し出すヴィンテージなグルーヴで、ニューヨークやロンドンとは違ったエッセンスを表現している。

仕掛人は意外にも、Dreams Come Trueの中村正人。彼が学生時代にバイトしていた南青山のパブ・レストランGasconが、そもそもの出逢いの場とされている。そう、高中正義の名盤『TAKANAKA』に収録されている<Gascon Cocktail>の舞台だ。カナザワも2〜3回、足を運んだことがあるが、そこはジャズ・バーでも音楽を聴かせるカフェでもなかった(現在は閉店)。それでも何故がミュージシャンやモデル、役者などが数多く集まる、一風変わった場所だったらしい。言わば、飯倉片町にある伝説のキャンティの青山版、といえば分かりやすいか。

聞き流してしまえば、サラリと右から左へ流れていってしまう。でもふと耳を傾ければ、思わず足を取られてしまうようなこだわりグルーヴが、そこにある。

発売はドリ・カムのレーベルDCT Records。ネットでは HMV Onlineで購入可能なので、右上のバナーからどうぞ!