laurie_holloway「エレキ・ピアノ弾きで誰が好き?」なんて質問を受けることが時々ある。自分がよく名前を挙げるてきたのは、リチャード・ティーにボブ・ジェイムス、ジョー・サンプル、マックス・ミドルトン辺り。理由はもちろん、トーンの美しさだ。そこにこれから加わりそうなのが、このローリー・ハロウェイという英国人ジャズ・ピアニストである。

英国では作曲家としても知られ、BBCの番組の音楽制作にも関わっているというベテランのホロウェイ。その彼が79年にインディ・レーベルに吹き込んだのが、この『CUMULUS』というアルバムだ。今の言葉で簡単に説明するなら、硬派のピアノ系コンテンポラリー・ジャズ。

キャッチ・コピーには、英国産メロウ・ジャズ・グルーヴという形容がある。確かにビートの効いた曲では、そういうニュアンス。ノーマ・ウィンストンのスキャットも、実に美しく涼やかにグルーヴの隙間へ滑り込んでくる。でもアルバム前半はゆったり耽美的なヨーロッパ風ピアノ・ジャズで、ちょっとイメージが異なるか。曲によっては若干ジャズ・ロック・テイストも。ギターがヒュー・バーンズ、ベースがデイヴ・マーキーというと、英国ロックに深く入り込んでいる方は反応するかも。

生ピアノのリリカルさは、ちょっとデヴィッド・ベノワを思わせたりもする。GRP入りしてからのベノワは、普通に洒落たピアノ弾きになってしまったが、インディ初期の彼はブラジリアン・グルーヴを聴かせたりして、結構チャレンジングなクロスオーヴァー・サウンドを作っていた。ハロウェイはその英国版、という気がしないでもない。そういえば、アジムスよろしく、クロスオーヴァー・イレヴンで流れているとハマリそうな音だし、フランスのユニット CORTEXにも通じているな。

ひとりで過ごす真夜中から夜明けにかけての時間帯、ちょっと小さな音で心地よく鳴っていて欲しい音。