far_corporation今日脱稿したのは、ドイツ主導のプロジェクト:ファー・コーポレイションの1st(85年)。レッド・ツェッペリンの名曲<Stairway To Heaven(天国への階段)>をカヴァーして話題になった、TOTO勢参加の作品である。

今だから言えるけど、当時はこのアルバム、戸惑ったなぁ〜。片や、ツェッペリン自体がシングル・カットせず大事に扱っていた感のある<Stairway...>を、ディスコ・チャンチャカチャンみたいにしやがって、という怒り。片や、TOTO脱退から表立った活動がなかったボビー・キンボールが元気な歌声を聞かせ、そこにデヴィッド・ペイチとスティーヴ・ルカサーが参加していると言う喜び。その狭間で何ともと複雑な想いを抱いたのだ。しかもコレが全英トップ10入りの大ヒット。一緒にカヴァーされたフリーの<Fire And Water>なんて、最初に聴いた時は、サビが出てくるまでカヴァーとは気づかなかった。

でもこの辺り、おそらく世代によって受け入れ方がまったく違うはず。ツェッペリンに思い入れの薄い世代は、こうしたカヴァーもスンナリ聴けてしまうのだろう。でもクラシック・ロックで多感な重大を過ごした自分には、“臭いモノには蓋をすべし”という気持ちだった。

それから四半世紀が過ぎ、超久し振りにアルバムを聴いたら、印象はだいぶ変わった。仕掛人がボニーMのプロデューサー(後にミニ・ヴァニリも)ということで、<Stairway...>の後半はもろディスコ、というイメージがこびり付いていたが、改めて聴くとそれほどでもない。イヤ、確かにそれっぽいビートは鳴り始めるものの、音が重厚でチョッと80年代のジェネシス風。ドラムの音像はまさにフィル・コリンズで、終盤にはゴスペル・クワイアまで登場する大曲になっている。

他にも、<Hold The Line>を髣髴させるハード・シャッフル<One Of Your Lovers>があったり、ボビー・キンボールの書き下ろしが2曲あったり。これらの曲では当然ルカサーのギターが堪能できる。しかもドラムは、まだロンドン時代のサイモン・フィリップス。彼らがスタジオで顔を合わせた可能性は低そうだが、本作の日本発売直後、ジェフ・ベックと来日したサイモンとルカサーは、軽井沢のロック・フェスで一緒にセッションするのである。 

ボビーの他にも3人のシンガーが参加しているが、そのうち1人はマイケル・シェンカーとの活動で名を上げたロビン・マッコーリー。とはいえ、ボビーが主役なのは疑いようがなく、これを機に彼のドイツでの活動が本格化して行くのだった。