brian_auger
去年からの締切持ち越し(?)で、ようやく執筆に取り掛かったブライアン・オーガー。振られているのはレニー・ホワイト(ds)も参加した77年作『HAPPINESS HEARTACHES』だけど、今日は朝からトリニティやオブリヴィオン・エキスプレスばかり聴いてるので、とりあえずココでは去年の秋に国内盤が出た最新アルバムを紹介しよう。

CDをスピンさせた途端に聴こえてくるのは、オーガーのシグネイチャーであるハモンド・オルガン。ビートもグルーヴィーなジャズ・ファンクで、やっぱりこの人は変わらないなぁ…と改めて。

現在のオーガー・サウンドの中心は、息子のカーマである。このアルバムでは打ち込みやループを使っているのでパーカッションのみの参加だけれど、本来はバンドの要であるドラマーを務め、スタジオではエンジニアを兼任している。娘のサヴァンナもヴォーカルで常駐。そこにオヤジが乗って、ギターのジェフ・バクスター(元気だったんだ!)やジュリアン・コリエル(ラリー・コリエルの息子)らゲスト勢が加わる。

若い世代がサウンド・メイクを担うだけに、他の楽曲ではスムーズ・ジャズっぽかったり、シャカタクにオルガンが入った風情のサウンドも。かつての熱気よりアーバニズムが香るのは、みんな米西海岸での生活が長くなったのが理由だろう。オーガー自身は流行など無頓着な人であるそうだし。

カナザワがオーガーに興味を持つようになったのは、78年のライヴ・アンダー・ザ・スカイでの来日(@田園コロシアム)がキッカケ。ジャズ・ドラマーの故トニー・ウィリアムスのセットで、ロニー・モントローズ(g)やビリー・コブハム(ds)と共演したのを知ってからだ。その時の模様は、トニーの79年作『THE JOY OF FLYING』で1曲聴くことができる(コブハム抜き)。実はロック好きのトニーは、アラン・ホールズワースとニュー・ライフ・タイムを組んでいたのはご存知の通り。

元々オーガーは、スティームパケットでロッド・スチュワートをフロントに立たせていたから、英国ロック好きなら誰でも名前は知っているはず。だがジャズ・ロックにR&Bをまぶしたリアル・クロスオーヴァー・サウンドは、当時の日本の音楽ファンには難しすぎたようだ。第2期ジェフ・ベック・グループの残党が組んだハミングバードがそこそこ人気があるのに、それがオーガーには及ばなかったのは、ジェフの名前の有無だけではないだろう。ジャズ・ファンからもトニーほどには評価されていない。ようやくオーガー再評価が始まったのは、90年代のレア・グルーヴ・ブームからだ。

それでもオーガーは、トリニティやオブリヴィオン・エキスプレスを通じて、かなりの著名ミュージシャンを輩出している。すぐに思い出すだけでも、ロバート・フリップ人脈に名を連ねるジュリー・ドリスコール(vo)、アイソトープで活躍するゲイリー・ボイル(g)、ロビー・マッキントッシュやスティーヴ・フェローニといったアヴェレージ・ホワイト・バンドの歴代ドラマー、彼らと近くココモやモリッシー・ミューレンに籍を置いたジム・ミューレン(g)、そしてホワイトスネイクで叩いたデイヴ・ドウルなどがいるし、ジェフ・ベック周辺では第一期ジェフ・ベック・グループのミック・ウォーラー(ds)や第2期のクライヴ・チャーマン(b)、その端境期にシンガーを務めて後にサンタナで名を上げるアレックス・リジャートウッドらがオーガーの元から巣立った。それこそ行き着くジャンルはジャズ・ロックだけでなく、プログレ系やハード・ロック、ブルー・アイド・ソウルへと限りなく広がる。ロンドンは狭いから、みんなクラブやパブでジャムったりして、すぐに仲良くなっちゃうワケだな。

ジェフ・ベックなら滔々と語れるのに、オーガーについて話せない人は、英国ジャズ・ロック・シーンを語るべからず。