breakaway
『ソウル・ファンク・ブギーのみならず、ロック・ジャズまで包括した、まさに全方位的にアピールする70年代音楽の総決算!』

そんな大袈裟なキャッチコピーとは裏腹に、B級感がムンムンに満ち満ちた4人組がこのブレイカウェイだ。でもその親近感溢れるシティ・グルーヴ・サウンドが、ちょっと放っておけないんだよなぁ〜

ブレイカウェイはポートランドで結成され、セントルイスやラスヴェガスを拠点にドサ廻りを続けていたという、正真正銘のインディ・バンド。77年と79年に自主制作でアルバムを作っており、その2枚をコンプリートしたのがこのCDである。Kon & AmirのKonが掘り起こして国内外のDJ諸氏に大注目されたそうだが、ローカル・バンド故に個性を欠くし、影響力にも乏しい。全方位的なのは、クラブで長い間ヒット曲全般に対応してきたことを考えれば当然で、バンドが自然に覚えた身のこなしだろう。気持ちよい涼風グルーヴやベースあがブイブイ鳴ってるアーバン・ファンクを供給するかと思えば、酒が入った時の盛り上げにしか使えないダサダサのロック・チューン、チープなディスコ・ダンサーも同居する。一方、現場で鍛えた演奏力はさすがに危なげなく、その実力に裏打ちされたバランス感こそブレイカウェイの魅力だろう。

個人的感想としては、ファンク・ロック色とジャズ・テイストを併せ持ったブルー・アイド・ソウル的佇まいが面白く、CTI期のシーウインド、マイアミ系ブルー・アイド・ソウルのチョコレートクレイやスパッツあたりを綯い交ぜにして、ややロック寄りに仕上げたという受け止め方。特にヴォーカルはポーリン・ウィルソンを思わせるキュートな歌声とパンチ力を持ち、そこにパワーとソウル色を加味した感がある。ただクラブ廻りが過ぎたか、多少おミズっぽさが過ぎるところも… グループ・ショットを見ると、少し薹のいったラテン歌謡でも演りそうな女性シンガー+男3人の非黒人4人組で、如何にもB級らしい。中にはジノ・ヴァネリのバンドをバックにポーリンが歌ってる、みたいなアグレッシヴな曲があったりするが、そこをうまくまとめるプロデューサーが不在というのが自主制作の悲哀だろう。逆にメジャー物を漁り尽くしたマニアは、そのB級感を途轍もなく愛おしく思うはずである。

ちなみにリーダーのギタリスト氏は、ウェス・モンゴメリーと、サンズ・オブ・チャンプリンのテリー・ハガティに影響を受けたそうな。サンズはビル・チャンプリンがいたシスコ発の先鋭的ファンキー・ブラス・ロック・バンドだけれど、狂信的ファンを持ちながらも、ジェファーソン・エアプレインやグレイトフル・デッドに比べて語られる機会が少ないので、ちょっと興味深かった。後半で聴ける79年作は、今でいうブギーな感じの楽曲が増えて ちょっとディスコ寄り。でもそこで聴けるクールなシンセ・サウンドは、この時代のローカル・バンドにしては進んでいたと言えそうだ。

アナログに大枚出すタマじゃないと思うけど、ノーマル・プライスでCDをゲットする価値は充分。かのコンピ好作『AMERICANA』にも収録されていたな。