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待ちに待ったダーティ・ループス、デビュー作が到着した。ずいぶん前から予約し、発売日にゲットして、即ヘヴィ・ローテーション。期待通りの面もあれば、以上も以下もあるけれど、少なくてもデヴィッド・フォスター&フレンズでの来日ステージでの不完全燃焼ぶりを払拭できたのは間違いない。

レディー・ガガ<Just Dance>、リアーナ<Rude Boy>の男版<Prude Girl>、ジャスティン・ビーバー<Baby>、そしてアデル<Rolling In The Deep>と、ポップス・ファンなら誰もが知っている楽曲を斬新なアレンジと超絶技巧でリメイクし、それらの画像がYou TUbeで大ブレイクしたスウェーデンのトリオ。その画像に魅せられたデヴィッド・フォスターが、Verveレーベル会長に就任して真っ先に契約したアーティストでもある。かくいうカナザワも、同じようにYouTubeで彼らの存在を知ったクチ。だからフォスターが動いたと聞いて、彼らの正式デビューを心待ちにしていた。

それから約2年。意外にもフォスター公演で先にナマを聴くことになったが、その時は映像作品に漲っていた彼らの凄まじさが伝わらず、歯痒い思いが残った。まさかデビューまでこんなに待たされるとは思わなかったが、なるほどアルバムはそれだけの力作に仕上がっているし、マーケティングの戦略も周到に練られたに違いない。

メンバー揃ってスウェーデン王立音楽アカデミー出身というコトで、演奏スキルが凄いのは予想通り。驚いたのは、アルバム通してパワーが落ちないところで、テンションを弛めた楽曲がほとんどない。まさにキャッチコピーの “エナジーブースト・ロック” に偽りナシ。ありがちな甘いバラードの代わりを果たすのも、シンフォニックなスロウ・チューンだ。分かりやすく言えば、ドリーム・シアターがポップ・ロックやEDM系のマテリアルをナマで演っている感覚!? そこにジャズやファンク、クラシックの要素が鋳込まれ、ハイブリッド感を高めている。一体感が強いのは、グループの成り立ちが学生バンドだから。ただし彼らはその頃からプロとしてセッション活動を行なっており、様々な形で顔を合わせていたらしい。特に鍵盤とベースは常にスウェーデンのトップ・レベルの音楽教育を受けていたサラブレッド中のサラブレッドで、10歳前後からの幼馴染みだそうだ。そんな3人が、自分たちのやりたいコトが自由にできるバンドとして組んだのが、このダーティ・ループス。こんな出自は、ちょっぴりTOTOを思わせる。

ただ唯一残念だったのは、演奏スキルや編曲・構成での恐るベき力量に比べると、曲作りのレヴェルが僅かに落ちること。結局YouTubeに上がっていたカヴァー曲を凌ぐようなインパクトを持つオリジナルはなく、そこは発展途上と言った方が良いかも。ハイスキルが売りなだけに、どうしても難解でヤヤコしい方向に進みがちだが、それをどう抑え込んで耳に優しいメロディを届けて行くかが今後の課題かも知れない。とにかく、リード曲<Hit Me>やスピード感溢れる<Sexy Girls>の次に耳に残ったのが、日本盤ボーナス曲<Automatic>(宇多田のカヴァー)というのは、どうもね…。まだ聴き込み不足なのは否定しないが、場面展開やアレンジが先に耳につき、楽曲のメロディがもうひとつ弱い気がした。

でもこれでデビュー作なのだから、本当に驚異的。普段は斜に構えて余計な期待を抱かないように努めている自分だけれど、コヤツらにはあまりに待たされ過ぎ、その分気持ちが入ってしまったようである それだけ期待が大きいので、敢えて苦言も少々…。

ついでに書いちゃうと、右上のグループ・ショットを日本盤ジャケに使っているのも何だかなぁ…。それこそ何処にでもいるオルタナ・バンドみたいなアートワークになっていて、彼らの持つ毒気や狂気、独創性が削がれている。そりゃあ若いリスナーに売りたいのはよく分かるし、飼い馴らされて個性を失った日本の若い世代には、これぐらいでちょうど良いのかも。でもだからこそ、音楽に熱くなれ!ということを伝えたいじゃないの キャッチコピーでは “音楽をやりたくなるか、止めたくなるか”と謳っているのに、目ヂカラの強いオリジナル・ジャケを差し替えるなんて、やってるコトがチグハグだ。

それに最初にYouTubeの画像に飛びついたのは、ジャズ・フュージョンやAOR系の、それこそ耳の肥えた先物買いの大人リスナーだったはず。ダーティ・ループスの凄さを一番理解しているのも、間違いなくその筋だ。だから、この方面の人気をまず固めないと、どっち付かずに終わってしまう可能性も。逆に、そちらは放っておいても騒いでくれると踏んでいるなら大したモノだが、変にミーハー・ファンがついてしまうとウルサ方は離反する。その匙加減が難しいのだ。だからこそ、ジャケも完全差し換えではなく、オリジナル・ジャケをブックレットにそのまま残しているのだろう。なのでカナザワは、すぐに日本盤ジャケをハズしてしまいました。

いずれにせよ彼らは、2014年のブライテスト・ホープに輝く可能性メチャ高のニュー・カマー。…というか、カナザワ的には、これだけワクワク感を煽ってくれた新人は、久しく居なかった。数年前にノルウェーから現われたオーレ・ブルードにも驚かされたけれど、こちらにはフォスターという黒幕(クレジット的にはエクゼクティヴ・プロデューサー)がいるし、何と言っても大メジャー:ユニバーサル傘下のVerveからの登場である。リード曲さえ当たれば、大きく化けるのは間違いない。願わくば、どこかで日和ったり勘違いしたりして、売れセンに走るようなことにならぬよう。

ちなみに彼らは、現在プロモーションで来日中。3〜4日前からTVに出演したり、インストア・イベントに出たりして、知名度アップに勤しんでいる。5月に予定されているBillboard Liveでの単独初公演も楽しみだ。