homi_jarvis
昨今の怒濤のような廉価CDリイシューの連続に、サイフのヒモが弛みっ放しのカナザワ。とはいえロクに聴く時間がなく、未開封の山がドンドン高くなっていくばかりだ。でも、この手の再発は “売り切れ、即廃盤”というケースが当たり前なので、やはり早く買っておこうという強迫観念が働く。そんな中、今度はフュージョンの名門GRPレーベルの再発シリーズ【GRP MASTER COLLECTION 1000】が一気に50タイトルも 幸い、気になるところはほとんどCDを持っているので、当時カセットへ録音して済ませた数枚のみ購入。唯一の例外が、このホミ&ジャーヴィスだ。アナログもCDも持っているが、自分の元にも再発リクエストが複数入っていたタマだったので、思わず買い直した。ラインナップに入れたA&R氏、ナイス・ジョブ

このデュオのワン&オンリー作の登場は84年。GRPがアリスタ参加から独立し、ひとつのレコード会社として動き始めてから、結構早い時期のリリースである。インドの血を引くアマンダは、英国生まれでクリーヴランドやシカゴ育ち。ハイスクール時代に声楽を学び、ミュージカルの曲やゴスペルを歌っていた。その後ヨーロッパ旅行の際に訪れたギリシャが気に入り、そこのナイトクラブで歌うことに。3年後ニューヨークへ戻り、ジャズ・クラブで歌いながら本格的に音楽の道へ進もうとしていた。彼女はギリシャ語はもちろん、フランス語やスペイン語、ヘブライ語でも歌うことができたそうだ。

そんな時に知り合ったのが、ウィスコンシン生まれのブライアン・ジャーヴィス。2人は早速コンビを組み、自分たちの曲を音楽出版社に売り込み始めた。これは上手く行かなかったが、彼らの出合いのキッカケを作ったヴォーカル・トレーナーが、「デュオ・チームとして売り込んだ方が良い」と助言。その甲斐あって、デイヴ・グルーシン&ラリー・ローゼンが彼らとの契約に名乗りを上げ、このデビューに繋がった。

収録曲には、ジノ・ヴァネリの弟ロスがリー・リトナーやハーヴィ・メイソンと共作した曲もあったりするが、大半はアマンダとブライアンの共作曲 or 一方が絡んだ曲。参加メンバーは当然GRPの常連たちで、グルーシンやリトナーの他、デヴィッド・サンボーン、トゥーツ・シールマンス、マーカス・ミラー、アンソニー・ジャクソン、ジョー・ベック、スティーヴ・カーン…といった著名ミュージシャンが連なる。その音はAORと言うより、早かりしスムーズ・ジャズ・ヴォーカル作品というべき。この時期のGRPサウンドが好きなら、まず裏切られるコトはない。コレ1枚で終わってしまったため浮上の機会はなかったが、タイトル曲はアダルト・コンテンポラリー・チャートで26位をマーク。本当ならもっと評価されて良いデュオだった。

さて、今回のライナー(初めて名前を見る方が執筆されてます)には、“その後のこの2人の動向は全く知られていない” とある。が、アマンダは、90年代にグローヴァー・ワシントンJr.のセッションに参加して歌っている。更にライナーには、ネット検索で同姓同名のアマンダ・ホミに辿りついたものの、別人と結論づける記述が…。でも実はこれ、間違いなくアマンダご本人。“写真では判断がつかない” と書かれているけれど、名前自体が珍しいし、そもそものこのインド系のエキゾチックな顔を見間違えるはずもない。確かに彼女のサイトのバイオやFacebookでは、ホミ&ジャーヴィスには一切言及されていない。でも現在のアマンダはワールド・ミュージック方面に進み、00年代に入ってアルバムを1枚、そして最近2枚目を出したばかりのようだから、この当時のことはあまり触れたくないのだろう。

一方のブライアン・ジャーヴィスは、確か、GRP関連のアルバムに参加作があったと記憶する。が、その後は本当に消息知れず。やはりネットで探すと同姓同名のシンガー・ソングライターが複数出てくるものの、こちらはどうも年代が合わないようだ。

“彼らは何処へ行ってしまったのか? 謎は深まる”…とライナーは結んでいるけれど、実はそうでもない、アマンダは頑張っているよ、というオチで…