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アラン・ホールズワース@ビルボード・ライヴ東京 2nd Show。自分には勝手知ったるヴェニューだけど、プログレ系リスナーには縁が薄いようで、「初めて来た」という声が飛び交っている。もうオープンから7年近く経つけれど、これも六本木スウィートベイジルがクローズした影響だろう。

そういう自分は、逆に最近のホールズワースに縁が薄い。カナザワにとってのホールズワースは、ソフト・マシーン、ゴング、UK、ブラフォード、トニー・ウィリアムス・ニューライフタイムのギタリスト。ソロ活動を本格化させ、シンタックスを使うようになった80年代半ばまでは聴いていたが、この六本木PIT-INNでのライヴ盤を録った90年頃には(リリースは03年)、もう積極的に追っかけなくなってしまった。結局ホールズワースって、ギター弾きとしては超絶技巧でも、曲作りが上手くないから、アルバムはどれを聴いても同じようなイメージに固まってしまう。コード進行がユニークすぎて、普遍的メロディラインが成立しないのだ。だからギター小僧には恰好の練習ソースでも、音楽としては、になってしまう。

それでも今回、敢えて足を運んだのは、引退表明で最後のジャパン・ツアーになる、と知ったから。やっぱり一度はナマで観ておきたい、そう思わせる職人的レジェンドなんだな。しかもキーボード・レスのトリオ編成で、ベースは元イエロージャケッツのジミー・ハスリップ。ドラムのゲイリー・ハズバンドは20年前からよく組んでいたが、いつの間にかハスリップと演るようになってたとは思わなんだ。何でもトニー・ウィリアムスの追悼プロジェクトあたりから、一緒にプレイするようになったらしい。

久し振りに姿を見たホールズワースは、意外にもぷっくり太っていて…。でも神経質そうな表情はそのまま。時折アンプのツマミを調整しながら、ホニョホニョと個性的フレーズを繰り出す。特段 彼の信者じゃないので、調子が良いのか悪いのか判断はつかないけれど、普通に聴いたら“流麗”そのもの。1回のピッキングで何音出せるか、の如き早弾きトコロテン奏法は、まさに彼が編み出したスタイルと言える。しかもそのピッキングも、左手のフィンガリングも、極めてソフト。ガッツリした手応えを求める従来のロック・ギタリストとは対照的だ。それをどうプレイしているかは、プレイヤーならずとも一度は観ておく価値があった。

ハスリップのベースは、以前組んでいたジミー・ジョンソンのバイ・プレイヤー的スタンスとは違って、もっとアグレッシヴ。節度をわきまえつつも、押しの強いラインでアランをけしかける。ゲイリー・ハズバンドは手数王で何とも賑やか。時にウルサく感じる瞬間もあったが、ホールズワース自身が捕えどころのないリズム感の人なので、ドラマーはこれくらいハッタリをカマさないとルーズになっちゃうのかもしれない。セットリストの中心は、『ROAD GAMES』周辺のソロ初期ナンバーのようだ。

ところで、気になるホールズワースの引退表明。このワールド・ツアーが終わったらスパッ!と身を引くのかと思いきや、実はそうでもなく、来年のスケジュールもツラツラ入ってきてるらしい。もしかして、“もう大きいツアーはやらない” という話に、尾ヒレがついたのだろうか。元々感情の起伏が激しい人、とも聞くから、スランプ時の投げやり発言だった可能性もある。ライヴがハネたあとは毎回メンバーとミーティングを開くそうで、ミスが重なると、しばらく楽屋に引き蘢ってしまうとか。果たして今夜はどうだったのだろう? …とは言っても、もちろんオーディエンスには分からない些細なミスだろう。完璧主義も度を越すと、はた迷惑なだけであるな