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間もなく恒例のジャパン・ツアー@Billboard Liveが始まるボビー・コールドウェルから、2年ぶりの新作『AFTER DARK』が届いた。発売日は公演初日となる来週15日。前作『HOUSE OF CARDS』が約7年ぶり、その前の『PERFECT ISLAND NIGHTS』が6年ぶりだったのに比べると、異例の短いインターバルである。

そこでピ〜ンと来た方はスルドイッ つまりこの新作は、『BLUE CONDITION』(96年)や『COME RAIN OR COME SHINE』(99年作)以来となる、ジャズ・スタンダードのカヴァー集なのだ。一応ファン・サイト限定で07年に出ている『LIVE AT THE BLUE NOTE TOKYO』というライヴ盤もあるが、あれは00年のツアーでの収録。10年に出た『THE CONSUMMATE CALDWELL』は、ジャズ系ナンバーをまとめた編集盤で、サントラのみのレア・ナンバーやアルバム未収曲のラインナップが特徴だった。

今回チョイスされた15曲中14曲は、ミュージカルや映画などで広く知られるスタンダード・ナンバー。オリジナル出典は様々だが、要はすべてフランク・シナトラのレパートリーだった楽曲である。しかもその1/3が、シナトラ初のライヴ・アルバム『SINATRA AT THE SANDS』(66年)から。カウント・ベイシー・オーケストラと共演した名盤として知られ、かのクインシー・ジョーンズがタクトを振ったシロモノだ。きっとボビーはティーンエイジャーの頃、このアルバムを貪るように聴き込んでいたのではないか。

近年はロッド・スチュワートやスティーヴ・タイレル、マイケル・ブーブレなど、この手のスタンダードをゴージャスに歌うシンガーが増えている。けれどボビーのそれは、「アンタらとは年季が違うんだヨ」と言わんばかり。ボビーが一目置くとすれば、レディ・ガガと手を組み、80歳代にして益々お盛んなトニー・ベネットくらいではないかな。

残る1曲は、ボビーのキャリア・ソング<風のシルエット>のジャズ・ヴァージョン。そのサブ・タイトル“After Dark”が、そのままアルバムのタイトルになっている。彼自身、20周年記念ヴァージョンに次ぐ2度目のセルフ・リメイクだが、若干ヒネリの入った前回に比べ、今度はほのかにラテン・フレイヴァーを漂わせるヴァージョンで好感が持てた。ホーンのアレンジや途中でスウィングに変わるトコロなど、なかなか凝った作りである。

バックを固めるのは、18ピースのビッグ・バンド。見覚えのある名は、サックスとコンダクターを担うアンドリュー・ニューだけだ。00年デビューした彼は、11年のツアーからボビーのバンドに加入。そのステージを観ていると、相当ボビーに気に入られているのが分かる。実際ライヴでも鍵盤を弾いたりして才能の片鱗を覘かせていたが、ここでも3曲アレンジを手掛けてフル・バンドを仕切っていて、その実力は予想以上。こりゃーボビーに目をかけられるワケだ。

間もなくスタートするジャパン・ツアーは、いつのもレギュラー・バンドを帯同するそう。その編成で、この新作から何曲か披露する予定らしい。その辺りがどうなるのかが、ちょっと楽しみ。僭越ながら、今回もライナーを書かせていただきました